メイド「私の嫌いな貴方様」
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111: ◆TEm9zd/GaE[sage saga]
2019/03/09(土) 19:44:26.97 ID:XWj0qJN60

ある朝、満員電車の中、私は痴漢されている女の子を見つけた。

私と同じ制服の少女。
おどおどとし声をあげなさそうな少女は、痴漢する男にとっていいカモなのだろう。

助けなくてはと思った。
でも、体が動かなかった。

おどおどした少女は怯えて何も言えないでいる。体を震わせている。

気づいているのは私だけではないのだろう。
それを証拠にちらちらと見ている人が何人かいる。
どうにかしたいけど声をかける勇気の無さそうな人、そもそも無関心な人。
他にも色々な人がいるけど、その人たちが少女を救おうとするのに一歩踏み出せないでいるのは見て分かった。

だからこそ私がいかなくてはいけないと思った。

だって私が一歩を踏み出さなくちゃ、あの子はこのままだ。

私が、私が一歩をださなくちゃ。
私が――


それでも足は動かなかった。




どうして。

そんなの分かっている。
怖いんだ。私も。

男にやり返されたらどうしよう。ひどい目にあったらどうしよう。

そんな考えが浮かんで足が動かないのだ。


たった一歩踏み出すだけ。
でも、私はその一歩が踏み出せない。
いつもいつも――。

勇気なんて、私には。


――カシャリ


その時、味気のない機械音が切られた。

それがカメラのシャッター音だと気づいた瞬間。


?「そこの人、痴漢です!!!」


女性の声だった。
その声は車中に瞬く間に響き、乗客の視線を一点に集める。


その女は指の先を痴漢している男へと伸ばしていた。

そこからはすぐ。
男は取り押さえられて、次の駅についた途端、ホームへと引きずり下ろされた。

かっこいい。
その少女を見て、そう思った。

憧れた。私は少女に憧れたのだ。

ああなりたいと、一歩踏み出せる人になりたいと。




眩しいと、思ったのだ。


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