925: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/08/18(日) 19:59:16.36 ID:TPJ777ywO
前を向くと、永井のIBMが集団の先頭に立つフラッドのIBMに向かっていきり立っている様子が眼に入った。永井のIBMが腕を振りかぶり、平らな頭部めかげて軽く開いた右手を打ち下ろそうとする。フラッドのIBMは瞬時に体勢を低くし、眼の前の相手の腰に肩からぶつかっていった。勢いそのまま、左腕で腿を抱えたフラッドのIBMは同時に右手を四十五度の角度で突き上げていた。掌底が頭部に衝突し、永井のIBMはあっけなく敗北した。
永井と中野が背後にかまわず走り続けている。背後から迫ってくる、墓掘人が迫ってくる、追いつかれたら墓を掘られる、墓掘人は手で墓を掘る、土のかわりに肉を掘る、横たわる肉体を墓のように掘る、背中の肉を掻き分ける、背骨を掴む、頭を丸ごと引っこ抜く、追いかけてくるのはそういうやつら、走ってくる、壁を這ってくる、天井をつたって追いかけてくる。やつらの関心はたったひとり。そしてそれは幸運なこと。
黒い星十字が一直線に駆け抜け、笑い声を渦巻かせている群体から飛び出してくる。
アナスタシアのIBMは先頭を走る断頭をしたいだけのIBMを追い抜き、追いつかれそうになっていた永井と中野の背中を掴んだ。一歩踏み込むと同時に腕を引いて二人を引き倒したかと思うと、次の瞬間にはアナスタシアのIBMは二人をぶん投げていた。
宙を舞い、禿頭と銀髪の頭上を永井と中野が飛び越えていく。星十字はそれを見守ることなく瞬時に踵を返すと、先頭を走るフラッドのIBMに意趣返しの右ストレートを突き放った。首のない幽霊と星十字が黒い氾濫に飲み込まれてった。
階段へと続くドアのところまで転がる二人をアナスタシアが追いかける。痛みを堪えうずくまる二人のシャツの襟や腕を掴んで引っ張りながら、アナスタシアは慌ただしく叫んだ。
アナスタシア「立って立って立って!」
永井「うるせぇ……」
身体を起こしながら、永井は小さな声で悪態をついた。
平沢が三人に合流する。手には通路に備え付けてあった消火器を持っている。
消火器を見た途端、永井は平沢の意図に気づいた。
968Res/1014.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20