914: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:52:42.57 ID:kdA8uLchO
最初に影を見たのは中野だった。中野が永井に呼びかける。二人は銃口を影に向ける。
暗闇が下りた廊下をまっすぐこちらに向かってくる。影が近づいてくるにつれ、暗闇に慣れた眼が影の覆いを透かす。
佐藤「永井君! まだ十五階に……」
永井が喜色をたたえる佐藤に向けて発砲する。銃火が互いの輪郭を一瞬だけはっきりと見せる。佐藤は俊敏な猫のように身を低くし、真っ直ぐ向かってくる。
永井の予想通り、佐藤は草刈機を身につけていた。腕を両断できるような大ぶりの刃物を所持していない以上、佐藤は“断頭”にうってつけの道具をビル内で調達する必要がある。くわえて社長室のある十五階からそれほど離れていないことも調達の条件に含まれる。よって佐藤は十一階南のプラントルームから“断頭道具”を拝借するだろうと永井は考えていた。
草刈機の回転鋸が耳をつんざく不快な音を立てて、接近してくる。
永井と中野は音の在りかめがけて発砲を続ける。
佐藤が倒れる──あきらかに罠──永井と中野はあえて接近する。発砲音、銃弾が永井の足首を砕く、中野が反射的に引き金を引く、佐藤の右耳の下半分が千切れるが草刈機で中野の右前腕部の内側を切りつける、佐藤は立ち上がり作業用ナイフを中野の腹部に突き刺す、永井は佐藤が拳銃だけでなく防弾ベストも黒服から奪ったことを見て取る……次の瞬間、永井の右肘と膝に銃弾が撃ち込まれる。
平沢が中野越しに佐藤を狙撃する。中野は後頭部を撃ち抜かれ即死、佐藤に凭れかかってゆく。佐藤は草刈機のシャフトを掴み自分の方へ引き寄せると、自分と中野の隙間に回転鋸を入れた。復活した中野の腹を草刈機が引き裂いた。
腹から溢れる内臓にかからないように中野を蹴り払うと、佐藤は永井に接近する。平沢からの銃撃に見舞われるが、防弾ベストと急所を庇う低い姿勢のためか佐藤の前進はとまらない。
平沢の銃が弾切れになる。
草刈機の回転鋸が永井の首の後ろに当てられる。
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