835: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/03/24(日) 23:49:47.34 ID:6D6vTS+OO
九階にある人事部。ひとりの社員が後ろめたさと自己正当化に苛まれて自分のデスクから動けないでいる。名前は青島。この青島が今回の内通者だった。
田中たちが捕獲されたときから、青島の内心は異常な勢いで焦燥し出した。内通の露見、共犯扱い、有罪、懲役刑、出所後の人生など考えたくもない。
みずからの手引きによって大勢の犠牲者が出たことにもちろん後悔はした。だがそれもすぐに自己弁護に埋め立てられてしまった。
だって、脅されたんだ。協力しなきゃ絶対殺されていた。やつらは弱みを握っていたんだ。断れるわけがない。弱み、弱みさえなければ。こんなことはしなかったのに。働いた分だけ評価されてれば、弱みなんて持たなかったのに。ずっと働きづめで、疲弊ばかりして、未来なんかなくて、みじめになって……
窮地に立たされた青島は、いっそのこと自首してしまおうかと一瞬だけ考えたが、結局それはできもしないことを夢想してわずかな慰めを得るだけの無駄な行為に過ぎなかった。
爆発とそれに続く停電が彼の心をさらに引っ込ませ、すべてが終わるまで何もしないでいようと逃げの決心をした。
何もしないでいたら、何も起こらないかもしれない……青島は淡い逃避の希望を抱いた。
突然、口を塞がれた。強い力で?が締め付けられパニックになる。
IBM(佐藤)『きみだね? 例の内通者は』
背後から声がした。聞き覚えのある声……ぞわりと、背中に戦慄が走った。
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