新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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663: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/10/15(月) 20:26:44.42 ID:z5kRHM0CO

オグラ「連続で何体出せた?」

永井「五体。調子がよくて九体だったかな」

オグラ「ハハッ。異常だ」


 あっさり言ってのける永井に対して、オグラの表情にさっきよりもおおきな驚愕がはっきり浮んだ。好奇心に輝いている。


オグラ「異常なくらい、IBMが濃い」


 オグラは内心で高揚しながら言った。


永井「幽霊が、濃い?」

オグラ「“Invisible Black Matter”。もとは亜人の放出する黒い粒子を指す」

永井「佐藤さんもそんなこと言ってたな」


 永井は研究所で初めてIBMの発現を視認したときのことを思い出していった。そのとき佐藤は永井が放出していた黒い粒子の量にあきらかに戸惑っていた。黒い粒子は天井のほとんどを覆いつくさんばかりだった。

 眼の前で繰り広げれる会話に中野はついていけなかった。永井がひとりごち、会話が中断したところで、中野は自分の胸元を見やった。Tシャツが大きく破れて血だらけになっている。


中野「おい永井! 汚れたぞ!」

永井「ブルーカラーは慣れっこだろ」

中野「赤だろ!」


 真面目な抗議と不真面目な回答は漫才みたいだった。二人の受け答えを無気力に眺めながら、オグラはようやく二本目のタバコに火を点けた。


オグラ (五年十年でその濃度はあり得ない。いや、期間だけが問題じゃない。人間の自我・心の発育段階によっても変わってくる)


オグラ「きみはいつから亜人なんだ?」


 オグラは紫煙とともにぽつりとひとりごちだ。



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