585: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/04/17(火) 22:00:57.90 ID:7BzTB0Y9O
亜人が三人も集まったのなら、尽きることのない命が三つも集まったのなら、《戦争》を、いや《戦争》が起きるのを止められるかもしれない。でも、そうだとしても、覚悟が決まらないし、勇気が足りない。美波がいたらと考え、すぐ思い直す。遠ざけねばならないのだ、争いや殺しといったおそろしいことから。アナスタシアはペシコフを亡くしたときの祖父の姿を思い出す。あきらかに心の均衡を崩していた、正気でいたくないという願望、他人事ではない死の恐怖。美波もそうなっている。佐藤のテロせいで、亜人の国内状況はひどくなるし、亜人の家族にとってもひどくなる。祖父のときよりもっとひどく、長く続く状況。
アナスタシアとちがって、中野は決然とした態度で永井に身を乗り出して大声で言った。
中野「いますぐ佐藤のトコに乗り込もうぜ!」
永井「バカかよ!」
永井は手で顔をおおい「あぁ……」という半分呻くような声を洩らした。それから、背もたれとともに身体を起こした。
永井「いいか? 現状僕らに勝機はない」
ふたりの大声に驚いたアナスタシアは背もたれから解放されると、あわてて中野の後ろの席へぽんとお尻を移して逃げた。
永井「佐藤の居所がわかってそこに乗り込んだとして、糞ガキ三人になにができるよ? だいいち奴を止める方法は? 檻にでも入れるか? その檻はどうする?」
中野「できることはないってのか!?」
アナスタシア「クソガキ……」
永井「ないだろ、ほとんど」
アナスタシア「三人……?」
永井「僕らの持ってるカードは次の二枚ぽっちだ」
アナスタシア「さん……」
968Res/1014.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20