新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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555: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/02/18(日) 21:34:33.45 ID:oL93h30zO

 ドーム型遊具のなかにいると、暗闇のおかげですこしだけ安心して休まった気持ちになる。コンクリートでできた半球形の屋根がすべてを遮断してくれ守ってくれるように思える。例外もあるが。ここにいれば、街灯の緑っぽい光やすれちがう他人の視線から避難することはできる。ただ熱気からは逃れられない。形と材質のせいで、熱気のほうが逃れられないといったほうがいいかもしれない。蒸し風呂とまではいかないが、そうとうな温度なのは確かだ。

 今夜は風がなく、涼むことは望めそうにない。ドームのなかにいるアナスタシアにはなおさら。

 アナスタシアは暑さが苦手のはずだったが、ドームの下で微動だにせず、膝をぎゅっときつく抱き締めて顔を埋めている。額には汗が浮かび、首や背中もしっとりしている。夜の湿気を吸いとりきれず、余剰な水分が全身の皮膚から浮かび上がっているかのようだ。

 アナスタシアは膝を抱えた姿勢のまま、三十分は動かずにいた。眉間を伝って流れた汗の滴が鼻の頭をくすぐったとき、アナスタシアは顔をあげ鼻をすすった。目尻をこすると、汗と涙で手の甲が濡れた。この自分の手を見ても、アナスタシアがこれ以上悲しむことはなかった。悲しむ理由は搾り取られたようになくなっていた。胸のなかに虚無感が拡がっていた。



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