55: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/28(土) 22:44:00.12 ID:8ENUCYV1O
隔離と管理。聴取の合間合間に美波が弟が見つかった後のことについて、答えに詰まる警官たちにくい下がって聞くことができたのは、かれらが口ごもりながら言ったこの二語だけだった。亜人と発覚した者は国の施設に収容され、研究協力が求められる。それ以上のことを警官たちはけっして口にしなかった。
美波は喚きたくなった。そんなことはだれもが知ってることじゃない。わたしが知りたいのは“わたしたちのその後”のことであって、あなたたちがどうするかではないのだ、と。家族が追い立てられ、追い詰められようとしているのに、あなたたちはわたしに協力を要請してくる。何の保証もないまま。もし弟を捕らえた人間がいたら、あなたたちはその人に懸賞金を支払うというのか?……
巡査部長は聴取がこうなってほしくないと思っていた方向に進み始めていると感じた。動揺や困惑がもっと表にあらわれていると思われていた亜人の関係者は、興奮を抑えつけながらしだいにそれを敵対感情に変えようとしていた。そういう反応自体はたいしてめずらしくない。警察がやってくるということは、警察が取り扱う領域に多かれ少なかれ取り込まれてしまうことなのだ。だから、それにたいして動揺するのは当然で、あとは信じないという気持ちを泣くか怒るかどちらの態度であらわすかの違いしかない。そして関係者たちの感情的な反応が時間が経つにつれ落ち着いていくのもよくあることだった。警察が頼りにするのは複数の目撃証言や証拠であり、家族や親しいものたちは思い出しか味方になってくれるものがないのだから……
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