54: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/28(土) 22:42:25.62 ID:8ENUCYV1O
美波の様子は弟の安否を心配する気持ちはあったが、自分にはそれだけしかないことも理解しているといったふうだった。苦しみによって意志を挫かれた人間の様子にふさわしく、美波もなにも求めていなかった。求めても求めても、なにも得ることはできないと美波はこの数時間で知り尽くしてしまっていた。
戸崎「新田美波さんですね?」
美波「はい……」
美波はかろうじて戸崎の質問に応えることができた。
戸崎「厚生労働省から派遣されました亜人管理委員会の戸崎です。あなたの弟、永井圭についていくつか質問したいことがあります」
美波がさっと顔をあげた。眼に消えかけていた光がふたたび宿り、涙に潤んでいるようにもみえた。もしかしたら、という思いが美波のなかに引き起こされたが、それは亜人管理委員会という戸崎の肩書きのためだった。
亜人となった人間がどんな扱いを受けるかを、聴取をしにやってきた警察官はだれひとりはっきりと答えることはできなかった。
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