50: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/28(土) 22:35:09.37 ID:8ENUCYV1O
エレベーターが目的の階に到着すると、二人は巡査部長の案内によってCPルームの前までやって来た。ドアの両側にはまたもや二名の巡査が待機していた。敬礼する二名を気にもとめず、眼鏡の男とあとにつづく女性は部屋にはいった。
部屋のなかには三人の男女がいた。三人ともスーツ姿で、このプロダクションの社員らしい。目つきが鋭い背の高い男がいちばん若く、眼鏡の男よりすこし年下にみえた。その男は顔を伏せて表情に影を作り、刺すような視線をだれに向けるでもなく沈黙している。陰鬱さがよく似合う男だった。もうひとりの男性社員は老齢で、腰にはまだあらわれていないものの背中の丸みが年齢による筋力の衰えを物語っていた。この初老の社員も若い社員とおなじく暗い表情をしているのが横顔からでもうかがえた。
かれらに対面する位置で腕を組んでいる女性は二人の男性社員の中間にあたる年齢だったが、初老の男より高い地位にいることが眼鏡の男には一目でわかった。役員クラスの地位なのだろう。命令する側特有の有無を言わせぬ雰囲気が女性からは漂っていた。いまの彼女はその雰囲気を意識的に態度にあらわしーー言葉でもあらわしたのだろうーー目の前の二人をまるで押し寄せてくる波のようにみずからの意思決定に従わせようとしている。
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