491: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/10/23(月) 23:15:08.39 ID:rkcK97lyO
道路では、まだ悲鳴がこだましていた。激しい戦闘音が轟いたせいで、怪我人たちのパニックがぶり返したためだった。このせいで、救急隊員たちの仕事は依然として進んでいなかった。
佐藤は散歩の帰り道のように悲鳴の中を歩いていった。そのとき、車列のあいだを抜けようとする佐藤を呼び止める声が耳にとどいた。
美嘉「すみません! こっちにまだ怪我人が、助けてくださ……」
佐藤は首をぐるりと回し、いつもの表情を美嘉にむけた。
美嘉は帽子の男の顔を見た瞬間、十七年かけて、いまこの場所にいる理由は、なにがあっても説明できないだろうという思いにとらわれた。終着点に突如として立たされた人間は、あたりの景色を見回すものだが、このときの美嘉は目の前にいる帽子の男しか眼に入らなかった。
佐藤はショットガンを両手に持った。銃を横にすると、薬室を開いて銃弾が残っているか確認することにした。銃口は美嘉の方を向いていた。殺す理由はなかったが、殺さない理由もなかった。それはなんとなくで行われ、言うなればコイントスのようなものだった。
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