新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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398: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/08/12(土) 23:57:55.97 ID:jvW3su8lO

三人はラウンジにある円形ベンチに腰掛け、ドリンクを飲み始めた。

永井は飲み物を奢った時点でさっさとその場を離れたかったのだが、アナスタシアが蘭子を怖がらせた分はきっちり埋め合わせをしろと視線で告げていたし、永井自身も必要のない感情を蘭子にも見せてしまったことに多少の申し訳なさも感じていた。

しかし、きなこの味がするという以外に飲み物についての感想はなく、空気は相変わらず重かった。

アナスタシアはがんばって蘭子が興味を持ちそうな話題を話して、さっき永井が見せた殺意のことを忘れさせようとした。

アナスタシアが話したのはロシアの民話に登場する不死身のカシチェイという老人についてだった。ニコライ・リムスキー=コルサコフが歌劇の主題にもしたこの老人は痩せこているが強い魔力を持った魔王で、不死身の源である魔法の針を折られれば死ぬが、その針は念入りに隠されている。オークの木の上の長持ちがあり、その長持ちの中にはウサギがいて、さらにウサギの中にアヒルが入っており、そしてまたアヒルの中には卵が入っている。魔法の針はその卵の中にある。

永井はその話を聞きながら、針を折って死ぬのなら楽な話だな、と思った。

ロシア民話について語るアナスタシアのがんばりが功を奏して、蘭子は話に夢中になり、元気を取り戻したようだった。



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