337: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 14:10:51.17 ID:8mPTevMeO
窮地から抜け出すために、アナスタシアは死ぬしかない。自分で死ぬか、永井に殺されるかの二択。前者が一回限りの死に対して、後者は無数に繰り返される死の始まりに過ぎない。
アナスタシアは黒い幽霊を発現する。黒い幽霊はさっきと同様立ったまま沈黙している。アナスタシアは喘ぎながら、苦しみに耐え頭を上げる。込み上げてくる嘔気を必死で抑えつつ、アナスタシアは自分を見下ろしている幽霊に命令の言葉を告げる。
アナスタシア「こ、殺し……」
首の後ろに衝撃を受け、アナスタシアの命令は途中で途切れる。頭が揺さぶれる感覚のあとに痛みがもたらされ、アナスタシアは木の根元にふたたび倒れた。幹に掴まってなんとか上半身だけ起こすとゴム紐が外れ、結んでいた髪の毛が首の後ろを撫でた。アナスタシアの後髪が血を吸った。
正面の斜面から永井が滑り降りてくる。スニーカーの裏が草や落ちた葉っぱを擦り、黒っぽい土が靴裏の溝を埋める。永井は斜面を降りながら黒い幽霊を発現し、自身も幽霊の後からアナスタシアに走って接近する。
永井がアナスタシアを発見したのは、ちょうどアナスタシアが黒い粒子を放出しているところだった。永井は咄嗟に手の平にぴったり収まる石を拾い上げると、手足を地面につけながら星十字の幽霊を見上げるアナスタシアめがけて斜面の上からから投石した。回転しながら放物線を描く石は、アナスタシアの後頭部にまるで正確に弾道計算がされた砲弾のようにぶつかった。これほど見事に命中するとは、永井にも思いもよらないことだった。
968Res/1014.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20