新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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303: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:14:44.61 ID:8mPTevMeO

アナスタシアが五歳のころ、不幸な出きごとがふたつもあった。ひとつは、アナスタシア自身が死んでしまったことである。このこと自体はたしかに不幸なできごとだったが、しかし結果を振り返れば、それほど悲しみにくれる必要のないできことでもあった。アナスタシアは奇しくもその名前の通り(この名前の原義はギリシャ語で復活を意味する)、復活した。アナスタシアは亜人だったのだ。

さて、アナスタシアが死に至るきっかけは、ナラードナヤ山の写真であった。ナラードナヤ山はチュメル州にあるウラル山脈の最高峰で、その名は「人民の山」を意味する。珪岩と変形した粘板岩からなっており、いくつかの氷河をいただいている標高一八九四メートルの山だ。山嶺にある谷にはカラマツやカバノキの疎林があり、斜面は高地性のツンドラに覆われている。
アナスタシアが見ていたナラードナヤ山の写真は春の訪れを感じさせるもので、これは向こう側の山から撮影されたものだった。空にはコーヒーに溶かしたミルクのような薄い雲が広がり、穏やかな青色が黒く見える山肌と対照的に映る。山にはまだ雪が残っている。山肌を縦に走る雪の線が何本もあり、遠くから見ると滝みたいだ。この写真は父親の友人のアルパインクライマーが撮影したもので、彼は医師でありスポーツ医学にも詳しいアナスタシアの父親に登山前にはかならず相談と検診を頼んでいた。こんど、彼はコーカサス山脈の最高峰、標高五六四二メートルを誇るエルブルス山への登頂に挑戦するらしい。



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