新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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243: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 21:55:45.67 ID:7K73HWKCO

いっそのこと、眼帯でもしてしまおうか。顔をあげ、ふたたび鏡を見たプロデューサーはそのように思った。さっき彼にお疲れと声をかけた社員はハンカチで手を拭いている。もうひとりは洗面台で手を振り水気を切ってから、ハンドドライヤーの方へ歩いて行った。手を入れると温風がゴォーッと唸りをあげた。

早坂美玲がしているようなやわらかくキュートな眼帯はとてもつけられないが、医療用の白い眼帯も気が進まない。昔のハリウッドの映画監督みたいに黒い眼帯をしてみたい。ジョン・フォード、ラオール・ウォルシュ、フリッツ・ラング、ニコラス・レイ、あとアンドレ・ド・トス。アンドレ・ド・トスがトビー・フーパーの『スポンティニアス・コンバッション』にカメオ出演しているのは、彼が五十年代に『肉の蝋人形』を撮ったからだと白坂小梅は言っていた。

小梅はほかにも、『リング2』で中谷美紀が精神病棟に入る際のカメラワークは、『エクソシスト3』でジョージ・C・スコット演じる主人公のキンダーマン警部が入院中の友人の神父が殺害された現場を訪れるシーンのカメラワークとそっくりで、それは意図的な引用だろうと力説していた。『エクソシスト3』は原作者ウィリアム・ピーター・ブラッディが自作『レギオン』を自ら脚色、監督した作品で、公開当時はのちにJホラーの担い手となる日本の映画監督や脚本家からウィリアム・フリードキンの最初の『エクソシスト』よりも恐ろしいと大絶賛された素晴らしいホラー映画だと(『エクソシスト』は本質的にパニック映画であり、『エクソシスト3』こそ真にホラー的な演出によって構成された作品なのだ。これはたしか黒沢清の言葉だったと思う)小梅は輝かしい瞳を爛々とさせながらプロデューサーに語った。

小梅ならこの皮膚に毒が染み込んだかのような隈を喜ぶかもしれないな、と思ったところでプロデューサーの現実逃避は実際の声によって途切れることになった。


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