新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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242: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 21:53:23.96 ID:7K73HWKCO

今朝、トイレの洗面台でプロデューサーがハンカチをくわえながら手を洗っていたところ、ふたりの社員が彼の背後を通り過ぎ、便器の前に並んで用をたしながら、ここ最近の忙しさについて愚痴を言い合っていた。正面と右側から聞こえる水音に混じって届くその愚痴に、言葉の悪さを感じつつも同調する気持ちもあったのは、鏡に映る自分の目元がいやな感じのする黒い隈をつくっていて、その変色はまるで黒くなったところが腐り出して眼球が転がり落ちてしまうような不吉な予感を彼に与えていたからだった。

このまま隈が広がったら。とプロデューサーは思う。眼球を提供した遺体みたいになってしまうのだろう。黒いからっぽの眼窩に氷を詰められる。それでも、いまのこの呪いがかかったかのような眼つきよりだいぶましになるだろう。

プロデューサーは肩を開いたかたちでまだ水気を帯びている両手を洗面台に置いていた。右手にはくしゃくしゃになったハンカチを持っていて、手を拭く途中で疲労が一気にのぼってきて、眼に重りがつけられたかのように頭をさげている。同僚ふたりがプロデューサーの隣で手を洗い始めた。すぐ右隣の同僚が鏡越しにプロデューサーを一瞥し、疲労困憊といった様子の彼にお疲れと言葉をかけた。プロデューサーはかるく頷いただけだった。


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