新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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228: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 22:15:53.48 ID:AMJLL1TVO

IBM(???)『行かないで!』


星十字の幽霊は、研究員の言葉とほぼ同じタイミングで叫んでいた。永井は手を離した。研究員が落下し、永井は縁を走る。東側の壁と南側の壁の角にいる星十字の幽霊は、南側の壁に移り壁面を踏んで落下する研究員にむかって跳んだ。研究員の身体を右腕で抱きとめ、左手を壁面に突き刺す。バルコニーに降り立ったとき、幽霊の足が植込みの木を折った。記憶の混線から回復した佐藤が西に向かって走る永井にむかってナイフを投擲した。ブッシュナイフは回転しつつ、永井の首めがけて飛んでいった。


永井「う、あ、あーー」


永井は走りながら前につんのめった。膝がかくんと折れ、転ぶようにして縁から跳ぶ。ナイフの刃が首の後ろの皮膚を切り裂くのを感じながら、永井は氾濫する河川の濁流のなかに落ちていった。研究員が示した脱出路は、この川のことだった。この川は放水路で、大雨のときには海まで水門が開くようになっていた。そしていま、茶色い大水に飲み込まれ、水死の苦しさを味わいながら永井は開いた水門へ流されていく。

星十字の幽霊の手は、西側のバルコニーの手摺から暗闇に向かってのびていた。その手のなかにはなにもなく、やがて幽霊の頭部は、ふたたび崩壊をはじめた。


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