206: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 20:58:28.19 ID:AMJLL1TVO
黒い幽霊の振り上げた腕が今度は佐藤の左脚を切断した。ーー確かに黒い幽霊はーー 永井はドアから通路に出ていた。佐藤の身体は上下が反転していて、頭から床に落ちていったが、 ーー命令せずとも言葉を反復したり、ーー 床が佐藤の頭を帽子越しに打つまえに ーー少しうろついたりはするがーー 黒い幽霊の手が佐藤の腹を貫いた。ーーコイツはちょっと……ーー幽霊は佐藤を床に叩きつけると、腹部を貫いていた指がずるりと抜いた。
幽霊は足元の佐藤にもう関心を払わず、背骨を伸ばすと首を上げて天井を見上げた。
永井とまったく同じ音声をした幽霊は、上を向いたまま声帯ではなくなにかべつの構造をしたものを震わせて、叫び声をあげた。
IBM(永井)『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』
佐藤 (勝手すぎだよ)
腕と脚、腹部からの出血は止まらなかったが、佐藤の唇を広がり、歯が剥いて、死の床に横たわりながら笑顔になっていた。
佐藤 (……おもしろいかもね)
IBM(永井)『あ゛……あ゛……』
黒い幽霊は鎮まると、頭部から崩壊を始めた。
IBM(永井)『お手数おかけしました』
それだけ言い残すと、黒い幽霊はこの世から完全に消滅した。それからすぐ、佐藤が死亡した。黒い粒子の発生とともに、切り落とされた手足が切断面にすべるようにむかって行き、断面同士がくっつくと細胞まで元どおりになった。
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