118: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/03/24(金) 22:31:47.21 ID:NJ9NkxEDO
それは両親が離婚し、圭と慧理子が美波とはなればなれになって暮らすようになった直後の思い出だった。寂しさをまぎらわすため飼い始めた飼い犬が動かなくなり、そしてすぐに死んでしまった。横たわる子犬を前に泣きじゃくる慧理子に圭はお墓をつくってあげようと言った。シャベルと飼い犬の亡骸が入ったダンボールを抱え、二人は河沿いの土手道を歩いた。夕暮れどきで、自転車をこいで下校する学生たちと何人もすれ違った。しばらくすると野球グラウンドが見えてきた。圭よりすこし年上の小学校高学年か中学生くらいの少年たちが草野球にもなってない気楽なプレーを楽しんでいる。
二人は野球グラウンドがある反対側の河岸まで降りて、川面が反射する光が眼に届くところまでやって来た。そこは雑草もあまり生えていない乾燥した地面があるところだった。圭がシャベルを地面に刺した。ざくざくという土を掘り返す音に混じって、野球少年たちの笑い声があたりに響いた。
飼い犬の墓ができあがっても、慧理子の眼から涙は溢れ続けた。手のひらや手首をつかって涙をぬぐい、眼の周りに引き延ばしてはまたぬぐう。圭はシャベルを手に持ち、慧理子の横に立ったままだった。抽象的な概念について考えてるというふうに黙っていると、圭はふと背後の気配に振り返った。
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