19:名無しNIPPER
2017/01/04(水) 15:46:41.05 ID:U03qxFq4O
04
老朽化した庁舎を出る。
ポストに手紙を投函する。
ふと配達が遅れるとの張り紙に気づいた。
嫌な気分になりつつ、僕は坂を下る。
目的地は港の近くの何でも屋だ。
ここで三日遅れの週刊誌を買うつもりだった。
島にはテレビもネットもある。
思えば遅れた雑誌を買って読むのも変な話だ。
これも離島だからしかたがない。
しばらく歩いて僕は店に着いた。
立て付けの悪いアルミのサッシを開ける。
店主の女性がテレビを見ていた。
骨董のスタンダードの液晶テレビ。
彼女は最近起きた本土でのテロのニュースをぼんやり見ている。
男性キャスターが、艦娘の手引きと推測を話していた。
彼女が僕に気づいたのはしばらく経ってからだった。
「ああ、提督さん。新調?文集?」
「あるならどっちも」
そう言うと、店主はカウンターから雑誌を出す。
「取っといたの。買うと思ってね」
「ありがとう」
礼を言いつつ、小銭を置くと店主は僕に言った。
「ねえ」
「なんですか?」
「提督さんのところの子、名前なんて言うの?」
艦娘の名前だろう。
「前言いませんでしたか?天城、由良、北上、夕立、涼風です」
そう言うと、おばさんは首を振った。
「ああ、違う違う。そうじゃなくて、艦娘としての名前じゃなくて。ほら、あの髪の青い子の名前。こないだね…」
店主の話は以下のようなものだった。
彼女の甥が私服で買い物に出た涼風を見たらしい。
その時に甥が知らない女の子だ!
と涼風に淡い恋心を抱いたのだという。
名前を知らなければ手紙も話しかけられない。
そう甥は思い、叔母である店主から僕に涼風の名を聞いてくれと頼んだそうだ。
「そうでしたか」
合点が行くが、なんとなく不思議にも思った。
今時の少年がそんな奥手だろうか?
ケイタイも繋がるこの島で…と思っていると店主は言った。
「腰抜けよね、ほんと」
合わせて笑ってみたが、同時に気分も良くなかった。
僕は追加で胃薬を買うと、再び庁舎へと戻った。
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