82:名無しNIPPER[saga]
2016/11/27(日) 00:07:06.20 ID:FHyQmHZuO
喚き散らす化け物に対し、応答はない。
次の瞬間、雪積もる地面の上に、何かが倒れる音がした。
自分の背後で何が起きたのか少年には理解出来なかったが、一先ず助かったようだと胸をなで下ろす。
妹を胸に抱いたまま恐る恐る振り向いた。見えたのは人間の脚、黒い外套の裾。
少年は思い切って顔を上げ、誰であるのか確かめようとしたが、それより先に声が届いた。
「随分と遅くなってしまったけど、助けに来たよ」
それは、二人が待ち望んだ声。
二人が想い描く英雄そのものであり、勇者と呼ばれる青年の声。
最早、誰であるかなど確かめるまでもない。二人は彼に飛び付いた。
彼は屈んで受け止めると、かたかたと震える二人を、そっと抱き寄せた。
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