78:名無しNIPPER
2016/12/17(土) 21:21:13.75 ID:wE4VPC8M0
「さあ?ボクは話を聞いただけさ」
「ともかく、私は文香さん…いえ、ここにいるアイドル全員が私にとって大切な仲間です。それを害するバグスターは、許せません。
だから、戦います。あなたはどうなんですか飛鳥さん、戦う理由はあるんですか」
ありすの言葉に、飛鳥の顔からフッと笑みが消えた。
「…?」
「戦う…理由、フフッ、さあ、楽しそうだったから…かな」
だがそれも一瞬、いつも通り不敵な笑みを浮かべて飛鳥は答えた。
「…本当に、あなたは信用ならない人ですね」
「…アタシも、特に理由がない…かなあ」
「ちょっと、紗南さんまで!」
「いや…そういうのじゃなくて
アタシもさ、ここに来ていろんな人やPさんに会って、今までゲームしか知らなかった自分の世界が凄い広がったんだよね。
それで、それが当たり前になっちゃった、今更もうゲームだけの世界には戻れないもん。…だからアタシは、その当たり前を守るために戦う…って感じ?理由がないんじゃなくて、全部が理由って言うのかな」
「…凄いいい事言ったはずなのに、煮え切らない感じで全然感動しません」
紗南はてへへ、と頭を掻く。
「ともかく!あなたの事はまだ信用してないんですからね!」
ありすは機嫌悪げにずんずんと廊下を先に進む。
と、唐突にその足が止まった。
「?…どうし」
飛鳥は訊ねようとしたが、その理由はすぐに分かった。
廊下の先から、見慣れた一人のアイドルが走ってきたからだ。
「ゼェ…ハァ…」
「…杏さん?どうかしたんですか」
先にルームに帰っていたはずの杏が、なぜか息を切らして走ってきたのだ。
「あ、ありすちゃん…えっとね…ゼェ…えっと…ハァ」
「落ち着いてください、らしくないですよ。杏さんがそんなに慌てるなんて」
「…うん…えっと……なんだっけ?」
ありすはズルッ、と肩を滑らせる。
「もう、しっかりしてくださいよ」
「うん…なんか、怖いもの見た気がするんだけど…よく覚えてない…」
その言葉に、飛鳥がピクと反応した。
(…杏さんは、"適合者"ではないね?)ヒソ
「え?あ、うん…」
隣にいる紗南に一言確認すると、タッ、と走り出した。
「ちょっと!」
ありすが慌てて後を追う。
「…何?なんなの?」
「何でもないよ!ちょっとー!飛鳥さん!ありすちゃん!待ってー!」
最後に紗南が二人を追って走り出す。
「…変なの」
杏は頭をぽりぽりと掻いてそれを見送った。
「…しかし、なんでよく思い出せないんだろう…」
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