43:名無しNIPPER
2016/11/20(日) 23:21:01.75 ID:qJIGiTwi0
(文香さんは…あの中に、何としても助け出さないと)
(いえ、ダメです。焦ったらまたさっきみたいに…冷静に観察するんです。パズルみたいに)
ありすは目を凝らし注意深く観察した。
そしてページとページの隙間、綴じ目に目を凝らした。
(…いた!)
綴じ目の中、かすかな隙間から、文香の姿が見えた。
「そこ…ですっ!」
ありすはスナップを利かせて杖を振るった。杖先から光の紐が放たれ、綴じ目のかすかな隙間の中へ吸い込まれた。
「は…あっ!」
ありすは足を踏ん張り、思い切り杖を引いた。重い、確実な手ごたえ。
本は動揺したように体を震わせ、紐をちぎらんと滅茶苦茶に羽ばたく。
「観念…するんです、ねっ!」
更に思い切り、紐に手をかけて引く。ずるり、と文香の身体が本の中から引きずり出された。
本は苦し気に泡立ちながら、燃える本のようにチリチリと霧散していく。
「文香さんっ!」
吐き出された文香をありすは受け止める。
「文香さん…文香さんっ」
「…ぁ、ありす、ちゃん…?」
文香は薄目を開け、ありすを見た。
その口元に、かすかに笑みが浮かんだ。
「…ぁりがとう、ございます…」
「…!」
ありすは涙をぐっと堪え、文香をそっと花畑の中へ下ろした。
まだ、終わっていない。ありすは文香を守るようにその前に立つ。
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