季節走り 心はいつまでも (モバマス)(輿水幸子)
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57: ◆ta6fr8WDAM[sage saga]
2017/10/05(木) 01:07:56.28 ID:Ebh9m4nt0
 いや、いやいやいや。
 まて、まってくれ。
 これは仕方がないだろう。
 いくらなんでも不意打ちが過ぎるというものだ。
 そう、これは不可抗力……。

 そんな俺の言い訳めいた思考を断ち切るべく、携帯が抗議の音を鳴らした。

「うおっ!」

 思わずハンドルを切り、路肩に一時停止させる。危なく事故だ。
 相手を確認する間もなく、慌てて電話を取る。

「もし……」
「ちょっと! どうして通り過ぎるんですか!」
「ああー……悪い」

 やっぱり幸子だった。相当怒ってる声。申し訳なくて死にたい。

「あーわるいじゃないでしょう!」
「すまん……本当に悪かった……全部俺が悪い。許してくれなくてもいい」
「えっ……ちょっと、あの……、そ、そんなに怒ってるわけじゃないですよ」

 声にあらん限りの怒りを乗せていた幸子が、急になだめるような声になった。
 どうも気づかないうちに、俺はずいぶんと沈んだ声を出していたらしい。
 ゆっくりと言い聞かせるように、幸子が言葉をつないだ。

「ええと、とにかくここに……駐車場来てください。私はここで待ってますから」
「ああ、すぐに行く」

 電話を切る。そして、俺はハンドルに突っ伏した。
 あー、くそ、やってしまった。
 今の俺は壮絶にマヌケだな。意識し過ぎだ。いつもみたいに、幸子に対してカッコつけることができそうもない。
 ぐるぐる回る思考を少しの間そのままにして……。結局、俺は何事もなかったかのように振舞うことにした。
 再びハンドルを掴んで、アクセルを踏む。
 ……怒った幸子の声は、久しぶりに聞いたな。


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