季節走り 心はいつまでも (モバマス)(輿水幸子)
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◆ta6fr8WDAM
[sage saga]
2017/10/05(木) 01:12:08.54 ID:Ebh9m4nt0
「よかった。あのまま帰ってしまうんじゃないかと思ってました」
「馬鹿だな、そんなことするわけないだろ」
駐車場に停めた車から降りた俺は、幸子と並んで歩いていた。
軽い声で流そうとしたが、幸子は少しだけ目を細めて、じっと俺を見上げる。
「本当ですか?」
「何を疑ってるんだよ。もう四年近く付き合ってる俺を信じられないのか」
「そうですね。さっきまでは信じていたんですけど……」
そう言われると辛いところだ。思わず顔を背けそうになり、こらえる。
幸子は多分、自分をスルーしたのは俺の冗談だと思っていたんだろうな。昔はそういうこともした。
なのに怒って電話をしてみれば、地獄の底で罪を悔いるような声で謝られた……というわけだ。不安にもなるだろう。
「いや、まあ少し緊張してはいるけどな」
「……そうみたいですね」
「……幸子はいつも通りだな」
俺の顔を覗き込む幸子に、心配の色はあっても緊張はあまり感じなかった。
その余裕ある態度が、逆に俺を焦らせもする。
幸子の中で、俺はどういった位置に置かれているのか。
そんな今更な不安を抱く自分に、呆れと怒りが浮かぶ。
内心でひっくり返り続けている俺に対して、幸子は柔らかな笑みを浮かべた。
「そう見えますか? よかった」
俺はなぜか、ぐっと胸が詰まるような気分になる。……また不意打ちか。
(ここまで)
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