季節走り 心はいつまでも (モバマス)(輿水幸子)
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◆MhRo2YnWE.V/
[saga]
2016/09/30(金) 21:50:41.37 ID:pRXmeXlp0
「どうです? ちょっとしたものでしょう」
「ああ、圧倒されたな」
手作りのお弁当も何度か見てきたけれど、これだけのお弁当はなかったかもしれない、と思う。
素直な賞賛に、幸子はますます嬉しそうに笑顔を深くして、顔を近づけてくる。
「次は、実際に食べて味をホメてくれてもいいんですよ」
「そうさせてもらおうか。いただきます、……って、あれ」
ぜひそうしたいところだが、お箸もフォークもないのに気づいた。
「幸子、箸がないぞ」
「あれ? そうでしたか?」
幸子はあわてた様子でカバンの中をごそごそと探した後、少し落ち込んだ風な顔でこちらを見た。
「ごめんなさい、私としたことが……お箸を忘れてしまったようです」
「ありゃ、そうなのか」
仕方ない、そういうこともあるだろう。その辺のコンビニで割り箸を……。
「なので」
幸子が、いつの間にか赤い箸を手にしている。俺が持っていた弁当箱に箸が伸び、彩り美しいサラダをつまんで持ち上げた。
そして、俺の口元へと近づけてくる、この、動き。
「私が食べさせてあげます。よかったですね」
「……おまえ」
「はい、どうぞ。あーんしてください」
どういうことだこれは。
彼女の一瞬のためらいもない、流れるような動き。この展開。まさか。
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