736:名無しNIPPER[saga]
2021/07/11(日) 02:28:42.85 ID:SXB4DH/W0
蜘蛛魔女のクラーグは、火勢を抑えた蜘蛛腹に不死たちを載せ、溶岩だまりを歩いていた。
王の封印の先には、魔女たちから直々に炎の魔術を教わった、デーモンの炎司祭が番兵として立っていたはずだったが、炎司祭の姿は無く、混沌に飲まれて機能を狂わせた石像たちも、姿を消している。
ゆえに封都への道程も、驚くほどに何事も起きない。
不死を荷のように担いで歩くという無茶も、その平静に頼った行いだった。
その静かな行進の容易さのためには、クラーグも荷馬車の真似事の屈辱を我慢できた。
戦士「うぉ…」
不死たちの一人が声を上げたが、驚いていたのは他の不死たちも同じだった。
地下の大空洞を煌々と照らす溶岩だまりは、クラーグの足元から、遠くに見える岩の塔の向こうまで続いており、その大空洞の至る所に、燃える木々と、朽ちた竜の下半身が点在している。
グリッグス「ここは…」
クラーグ「我が故郷、イザリスだ。今は混沌に呑まれ廃都と化しているが、昔は母上の生み出した偽りの太陽に照らされ、地上のように緑も豊かな都だった」
クラーグ「病み村が腐敗に沈む前は、かの大水道も我らの物だった。都には水が引かれ、小川も噴水も、畑もあった」
クラーグ「魔女の神秘や智慧を求めて、人や神が都を歩き、魔女見習いの呪術師たちが彼らの生活を支え、炎の魔術に長けたデーモン達が皆を守っていた」
クラーグ「そのような栄華を極めし時も、この都にはあったのだ」
ラレンティウス「………」
クラーグ「……生意気だな、ラレンティウス」
ラレンティウス「!? なん、なんでしょうか」
クラーグ「未熟者の分際で同情などしおって。この都は貴様の明日の姿かもしれんのだぞ」
クラーグ「炎を前にするならば、奢った想いは捨てよ。哀れみなど不要だ」
クラーグ「制御を知り、制御できぬを知る。それを畏れておればよい」
ラレンティウス「……申し訳ありません、でした」
ソラール「………」
ドドゴアアァァーーーーッ!!!!
クラーグ「!」
燃える都の岩塔が、轟音を上げて突如、溶岩だまりに沈んだ。
沈下の速度はあまりにも速く、その様は沈下というより落下と言えるものであり、更に沈んだのは岩塔だけではなく、その周辺の溶岩だまりや竜の脚までも飲み込み、沈下の範囲を急速に拡大させていく。
沈下現象は燃える木々を飲み込み、炭化した亡骸を飲み込み、焼けた遺跡群をも沈めていく。
戦士「なんだ!?何が起きた!?」
クラーグ「地盤が割れた!逃げるぞ!」
ラレンティウス「地盤が…!?」
クラーグ「混沌が溢れた折に、地下の多くが破壊を受けたのだ!掴まっていろ!振り落としても拾いはせ…」
不死たちが蜘蛛腹の長毛にしがみついた瞬間、廃都イザリスの遺跡群があった地点から、音すらも聞こえぬほどの大爆発が起きた。
その凄まじい閃光は不死たちから視力を奪い、その音は鼓膜を破り、放たれた熱波と衝撃波は、炎を操るクラーグの力に遮断されてなお、鎧を熱し、衣服を炙った。
クラーグは炎の土石流とも言える爆発を、逸らし、弾き、相殺したが、衝撃波に押され、今にも宙へと放り上げられんばかりにその身を揺さぶられた。
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