596:名無しNIPPER[saga]
2019/05/19(日) 23:55:20.92 ID:IqlMA4dA0
法官「………」
法官はしばしの間、口を噤んだ。
法官は本来即答も可能な言葉を敢えて溜め、重さを加え、そして語った。
法官「ウーラシールにて地の底より見出された古き人が、闇を放ちました」
グウィン「!…闇とな…」
月の女神「な…ならば都は?ウーラシールはどうしたのですか?」
法官「急報ゆえ、事の全貌はまだ……しかし生じた闇はウーラシールの王廟を覆うほどに大きく、光の者たる我ら神々の力は及ばぬかと…」
グウィン「及ぶか及ばぬかは余が定めること。では、要は何も分からぬと言うのだな」
法官「はっ…」
グウィン「………」
グウィン「よろしい。他に申すべき事はあるか」
法官「ありません」
グウィン「ならば行け。ウーラシールの闇を調べ、暴いたものを余に伝えよ。輪の都と小ロンドに使いを送り、闇の兆候を探らせるのだ」
法官「仰せのままに」
法官は王に礼をし、女王に礼をすると、踵を返して謁見の間から歩き去った。
後に残された太陽の光の王に、その妻が語りかける。
静かで細いその声には、怒気を微かに含んでいる。
月の女神「なぜイザリスをお見捨てになるのですか?ウーラシールのように、闇に蝕まれたわけでは無いのでしょう?」
月の女神「貴方と契りしこの身は、月の女神であると共に、太陽の女神でもあるのです。わたくしの太陽の癒しを以ってすれば…」
グウィン「ならぬ」
月の女神「何故?」
グウィン「我が月…我が太陽よ。そなたの癒しを受け継ぐは、我らが娘がひとつ、グウィネヴィアのみ」
グウィン「他はみな、敵を破る太陽と月。都は守れど、癒す事は出来ぬ。末の娘は闇を封ずる術を持つが、まだ幼く儚い」
グウィン「ゆえにそなたを危地へは向かわせられぬのだ。神を喰らいかねん闇が蔓延る地になど、なおのこと」
グウィン「混沌と闇を打ち破るは、我らの剣と槍。雷と閃光である。そなたの出る幕はない」
月の女神「………」
月の女神は太陽の王から視線を外し、やや俯いて眼を伏せると、意を決したように再び太陽の王の眼を見た。
月の女神「わたくしでは……わたくしの力では闇と混沌を治められぬと言うのであれば、竜の力をお頼りになるべきです」
グウィン「竜の…?」
月の女神「そうです。竜ならば、その身が無であるがゆえ、闇にも容易くは飲まれないでしょう。混沌の熱も、あれが仇なすのは神と人だけ。いずれの炎でもない第三の炎の使い手ならば、混沌にも耐えましょう」
776Res/935.37 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20