【スペース・コブラ】古い王の地、ロードラン
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595:名無しNIPPER[saga]
2019/04/09(火) 02:53:10.16 ID:wUOcHHr50
荒廃の風景を抜けたコブラとグウィンドリンを待ち受けていたのは、荒廃などとは程遠いアノール・ロンドの華々しさだった。かつて仮面の騎士と矛を交えた大広間にコブラは立ったが、コブラの眼には殺気立つ者の姿など映らない。
場内を歩く者は、皆一様に人と比べて大きくはあるが、人のそれに似た文化を思わせる出で立ちと、振る舞いをコブラに見せた。
流麗な外套を纏い、そこかしこで声を交えては微笑む者達。書を手に持ち、しかし急がず、怠けもせずに歩き回る小間使い達。簡素ではあるが粗末ではない服を着た巨人と、彼らに何事かを命じる銀鎧の騎士。
どれもがコブラにも受け入れられるほどの人らしさを纏うが、そのどれもが、人の世には決して纏えぬ清らかさと、暖かな安心感を放っていた。


コブラ「アノール・ロンドの隆盛、か……俺の世界の古代芸術史にヴァン・ダイクって画家がいるが、そいつが喜んで描きそうな美人がそこらじゅうにいるぜ」


グウィンドリン「今貴公が見ているものは、かつて在りし平穏。わが故郷のあるべき姿だ」


コブラ「らしいな。貴族趣味の収集家が好みそうな景色だが、これが闇を倒す事とどう関わる?それともただの自慢か?」


グウィンドリン「確かに郷愁の想いもある。だが闇を弑するというのなら、闇の成り立ちも覗かねばならぬだろう」


コブラ「闇の成り立ちとやらはもう見ただろ。人食いの裸踊りはキョーレツだった」


グウィンドリン「子が生まれた事そのものを成り立ちなどとは呼ばぬ。子の成り立ちを語るならば、育ての親の有り方と、子の境遇も語らねばなるまい」

グウィンドリン「焦ることは無い。貴公が見聞きするものは全て記憶の情景だ。現世にある貴公の身には瞬きの瞬間さえも訪れてはおらぬ」


コブラ「なるほどね……いくらか借りを作っちまってるようだし、あんたのその言葉は信用しよう」

コブラ「もう少しだけ付き合ってやる。なるべく退屈しないように頼むぜ」


グウィンドリン「では我が手を取れ。先を見せよう」



コブラがグウィンドリンの手を取ると、城内の景色はコブラの頭上や側面を通り過ぎ、コブラの眼前に柱の森の大広間を引き寄せた。
大広間には、かつてコブラを追い詰めたオーンスタインではなく、謁見を受ける為の第二の玉座に座る、冠の偉丈夫の姿がある。
王の四方には銀鎧の騎士達が立ち、王の右隣では筆記官が書を開き、王の左隣には月の女神が座についていた。
月の女神の身は、控えめながらも美しい細工の施された白灰色のドレスで整えられ、野にいた頃の妖艶な清らかさは、なりを潜めている。


法官「使いを向かわせるには畏れ多き要件が多々あるゆえ、私が直々に馳せ参じた次第にございます」


その二柱の前に跪いていたのは、身を偽るクリスタルボーイだった。長旅をしてきたのか、黒い外套の端には砂埃が付着している。


冠の偉丈夫「要件とは?」

法官「まずはイザリスの魔都を呑みし混沌についてです。我らが第一王子は問題無く混沌をお収めいたしました。黒騎士達の被害も最小にございます」

冠の偉丈夫「よろしい。して、魔女達はどうしたのだ?イザリスは?」

法官「イザリス様は、多くの姉妹達と共に亡くなられました。混沌はイザリス様の術により生じたと、辛うじて生き残った幾人かの魔女たちは申しておりました」

冠の偉丈夫「愚かなことを…火を畏れよと申したあの口は、すでに驕っていたか…」

月の女神「世を照らす火の弱まりに、最初に気付いたのは彼女のはず………やはり火の弱まりを止めようとして…」

法官「いえ、弱まりを止めるというよりは、火が消えた時のための“控え”をこしらえようと画策し、事を仕損じたようです。生み出された炎は歪み、本来産むべき命と温もりの代わりに、デーモンと灼熱を産みました。難を逃れた魔女たちも尽く異形と化し、あるいは本来の魔力を失いました。もはやあの魔都の再建は叶わぬでしょう」

月の女神「………」

冠の偉丈夫「…ならば、太陽の光の王グウィンの名の下に、都に封を施そう」



冠の偉丈夫は、家臣である法官に改めて己の名を告げると、掌に黄金色のソウルを溢れさせ、法官へ向け漂わせる。



コブラ「封……そうか、これが例の王の封印ってやつか」

グウィンドリン「左様。この封印は、多くのものを縛ることになる」



黄金の霧となったソウルは、法官の胸元に吸い込まれ、消えた。


月の女神「…封印するというのですか?」

グウィン「魔都の門へ再び赴き、その封を放て。さすれば混沌の染み出しも防げよう。封を放ったのちは兵を置き、見張らせよ。常に兵を絶やすな」

グウィン「して、その方の言い渋る凶報とは?」


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