591:名無しNIPPER[saga]
2019/02/16(土) 12:08:54.56 ID:Op2Rf6Pz0
空をゆく大槍は、雲間から漏れる光をも細槍に変えて引き連れ、古竜の群れに殺到する。
大槍は一頭の古竜の頭を撃ち抜き、背後に控える数匹の古竜を砕き、細槍たちは古竜達の翼や鱗を焼いた。
バッ!
太陽の光の王の冠と、瓜二つとも語り得る冠を被ったある偉丈夫は、勢いを削がれた古竜に追撃を加えるべく号令を放った。
天へ向け指された掌を合図に、最前列の騎士隊は雷の槍を、中堅の騎士隊は雷矢を、後衛の騎士隊は竜狩りの大矢を構える。
掲げられた掌は一拍を置いた後、振り下ろされ…
バババババーーッ!!!
光が覗き始めたとはいえ、未だ暗い曇天を、中小様々な雷と大矢が埋め尽くした。
殺到した第二波に飲まれ、古竜の群れはついに荒野へと墜落し、灰色の大樹の森は薙ぎ倒され、巻き上げられた土埃は天を衝く壁のように、神々に迫る。
その壁に向かい、神の軍勢の背後に控える魔女達は、掌に炎を巻き、太陽と見紛うほどに眩い火球の群れを放った。
ドドドドドドドド!!!
荒野を揺さぶる轟音と共に、土埃の壁は、薙ぎ倒された大樹と共に焼き尽くされ、神々の視界は確保された。
墜落した古竜達はしかし、太陽の光の槍による直撃弾を浴びた者達を除き、早くも鱗を生やし直し、翼の穴を塞ぎかけている。
コブラ「古竜との戦争か……俺の目には気休めには映ってないぜ。習った通りの景色だ」
グウィンドリン「………」
コブラ「どうだ?フィールドワークはここまでに…」
「かかれい!!」
回復しかかる古竜達へ向け、コブラの声を遮り、号令が鳴り響いた。
響いた声には聞き覚えがあり、コブラはとっさに声の主の立つ方向に顔を向ける。
コブラの視線の先には、古竜達へ向け槍を掲げるオーンスタインが立っており…
ズアァーーッ!!
コブラ「あっ!?」
オーンスタインの背後から、竜狩りの騎士を飛び越えて黒い塊が古竜へ向かった。
塊は黒い骨を思わせる鎧を纏う騎士達の集まりであり、その跳躍は矢のようだった。
竜狩りは、風を切って古竜へ殺到する闇の騎士達に、槍を用いて指示を送っている。
グウィンドリン「古竜を狩ったのは神々だけではない」
グウィンドリン「人は欲深く、あらゆる物を求める。ならば、無の世界を支えし竜達を逃すはずも無い」
グウィンドリン「人とは無明たる者。ゆえに我ら神々の力さえも求めたが、その欲を我らは助力と救済により満たした」
グウィンドリン「神の支えにより、力を使う方向を定められた人間達は、まさしく無敵だった」
コブラ「…ってことは、今の黒ずくめの連中は…!」
グウィンドリン「貴公も見ただろう。人がダークソウルを得た瞬間を」
グウィンドリン「竜狩りに仕えし者達は、原初の人騎士。神々をも凌駕する暗黒なのだ」
古竜達の元に飛翔した闇の騎士達は、勢いをそのままに古竜達へと斬り込んだ。
黒い炎を纏った特大剣を両手に握る者。黒い炎を輝かせる槍を持つ者。黒い炎を迸らせ、剣身を長く延長する片手剣を振るう者。
それらは一様に肉色のソウルを身に纏い、得物を振るう度に、肉色のソウルも振るった。
人間達の力は圧倒的であり、太陽の光の王の一撃にしてようやく倒れる古竜を、一騎につき三は斬り滅ぼした。
肉色のソウルと暗黒の炎を剣に纏わせ、古竜の正中線を両断したならば、ほんの一瞬、曇天が全くの闇に塗り替わるほどだった。
人間達の奮闘に、太陽の光の王は勝利を確信し、軍を進めた。
接敵した銀騎士達は、人間の巻き起こす破壊の渦を潜り抜け、衰弱した古竜に雷を突き立てる。
その銀騎士達を率いるのは、王の王冠に近しい冠を被る偉丈夫だったが、その偉丈夫だけは人に並び、殺気立つ古龍に雷の杭を叩き込んでいた。
魔女の炎は尚も嵐となって古竜の退路を塞ぎ、最初の死者ニトの放つ死の風は、人と神の手から逃れた古竜を腐らせ、塵へとかえしていった。
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