【スペース・コブラ】古い王の地、ロードラン
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590:名無しNIPPER[saga]
2019/02/05(火) 18:52:51.50 ID:1ynKsyNb0

影をその手に納めた其の者は立ち上がった。
皮膚を通して炎の透ける細脚を張り、曇り空さえ無い漆黒の天に掴んだ影を掲げ、声帯の無い喉を広げ、眼球の無い眼窩から涙を流した。
誕生の喜びに打ち震え、希望の出現に感謝するかのように、其の者は身体を震わせ、声を出せずとも叫び続けた。

すると、かつて倒れた者達も起き上がり、叫ぶ者へ向け歩きはじめた。
そして辿り着いた者から、叫ぶ者の身体にすがりつき、掲げられた手に、細腕を伸ばし始める。
伸ばされる手は増え続け、叫ぶ者にすがる者が五人を超えると、叫ぶ者は重さに倒れた。

倒れようとも、叫ぶ者はなお叫んだ。
欲する者達に皮を喰われ、腕をちぎられ、脚をもがれ、肋骨を抜かれようとも、なお叫んだ。
欲する者達は増え続け、叫ぶ者はついには人山に見えなくなったが、求める者は増え続けた。
そして増え続けた人々が、その動きを止めた時…



コブラ「!」



四つ這いで人を貪る者達の身体に、変化が起き始めた。

細く筋張った四肢は徐々に豊かになり、骨の浮いた背中には肉と体温が生じ始める。
枯れた木ノ実のような頭からはヒビと皺が減り、様々な色の髪の毛が育ってゆく。
その姿は、かつてコブラの見知った『人間』という者達に近くなっていった。



グウィンドリン「火に照らされた人の内に、あるソウルが生じた」

グウィンドリン「そのソウルは、他の偉大なるソウルと異なり、決して輝かず、火の内に生まれぬもの」

グウィンドリン「人の内にのみ生まれるソウルは、人にのみ宿る心を人に与え、人にのみ従う力を人に与えた」

グウィンドリン「故に人は、そのソウルを『人間性』と呼んだ」


コブラ「人間性?……こんな悪趣味な現象で生まれるソウルが、人間性だと?」


グウィンドリン「然り。人間性は決して神に依らず、火に依らぬもの」

グウィンドリン「しかし人間性とは、あらゆる物を求め、飲み尽くすもの。神であろうと、火であろうと、全てを闇に帰せしめるもの」

グウィンドリン「故に、我らが王と、我ら皆は、人間性を恐れた」



グウィンドリン「それを『ダークソウル』と名付け、神に従うよう導いたのだ」



四つ這いで貪る者達の溜まりから、一人立ち上がる者がいた。
立ち上がった者には隆々とした筋骨といきり勃つ男根が備えられ、顔には生気と、力に輝く双眸が現れている。
そして男の皮膚の下には、黒い嵐が巻き上がり、燃え上がっていた。



人間「オオオオオーーッ!!!」



両拳を天に突き上げ、男が全身を震わせ、顔を真っ赤に咆哮をあげると、地平線は炎と共に溶けた。
灰の荒地には大樹が森を作り、まばらに陽光を漏らす灰色の空は、やはり地平線の彼方まで続いているが、彼方からは灰色の塊が迫りつつある。
転移した先を知っていたのは、グウィンドリンだけではなく、コブラの心にも大きな驚きはなかった。



ズガガガーーッ!!!

コブラ「オオッ!?」



だが背後への落雷に、コブラは思わず飛びのいて、音の出所へ顔を向けた。
雷は荒地を撃ったわけではなく、太陽の光の王の右手に集約した時に、轟音を発していた。
太陽そのものとさえ言える輝きを握る王は、右腕を大きく振りかぶり…


バオオオーーッ!!!


輝ける太陽の光の大槍を、地平線を埋め尽くす古竜の群れへ向け、投げ込んだ。




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