【スペース・コブラ】古い王の地、ロードラン
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589:名無しNIPPER[saga]
2019/02/05(火) 16:45:29.23 ID:1ynKsyNb0

コブラ「それにこの分じゃ、今度もまたアフラ=マズダのお力添えは期待できそうに無いなぁ」


グウィンドリン「なぜそう言い切れる?」


コブラ「言ったろう、経験済みだからさ。彼女の千里眼はとてつもない。宇宙の端から端までを見渡して、俺に白羽の矢を立てるなんて訳ないくらいにはな」

コブラ「だが、この現象は意図的にアフラ=マズダが恵みをもたらしたというより、蛇口をひねって水を出すように、クリスタルボーイが法則をただ利用しただけに過ぎない」

コブラ「当の女神様は暗黒神の企みはおろか、この世界の存在にすら気づいちゃいないだろう。気付いていたなら、歴史の教鞭はアンタではなく彼女が執っていたはずさ」


コブラ「グウィンドリン、講義は終わりだ。ボーイの計画が闇の成長というのなら、ここで単位をボーナスしてる場合じゃない」


グウィンドリン「闇の増長を止めることを、望むというのだな?」


コブラ「ああ止めるさ。分かったなら早いとこ…」


グウィンドリン「ならん。闇を止めると望むならば、その闇について知らねばならない」


コブラ「おいそりゃどういうことだ?俺を留年させる気か?この先どうなるかなんて俺はもう知ってるんだ」

コブラ「偉大なソウルを手に入れた神々と竜の間で戦争が勃発。神の軍隊はその戦いに勝利して、火の時代だの光の時代だのを作ったが、火が弱まってそれも台無し。人間の世界に朝が来なくなって、代わりに呪いが流行り始めた。だろ?」


グウィンドリン「それは事実ではあろう。だが断片にすぎぬ。神の僕たる人と巨人を、怖れより遠ざける為の気休めだ」


コブラ「気休めだと?」


グウィンドリン「然り。神々の勝利は、差異に生まれた偉大なるソウルにより成された。差異は喜びと繁栄をもたらし…」


グウィンドリン「偽りの安寧と、闇の時代を生んだ」




灰の大樹が溶けはじめ、降り注ぐ陽光が霞み始める。
新たな転移は、コブラとグウィンドリンを灰の荒野より連れ運び、薄暗い夜明けへと立たせた。
竜も、大樹の一本さえも生えない地平線からは、陽光が射し、夜は白み始めている。
だが、大地を薄暗く照らすのは、太陽ではなく、地平線の端まで広がる赤々とした業火だった。


炎に照らされ、炎の生む光以外に何も無い、無の大地。
その大地から立ち上がり、炎に向かって細い身体を、幽鬼の如く揺らす者達が、炎を見つめるコブラの側を通り過ぎた。
通り過ぎ行く者達は小さく、コブラの横腹の高さに亡者の如き頭があり、腹は一切の内臓を欠いているかのように細い。裸体には性器さえも無かった。
一つの頭と、二本の腕と、二本の脚を持つだけの骨と皮。そうと形容する他ない者達が、まばらに地平線の炎へ吸い寄せられている。



コブラ「ここは…また地下か?こいつらはなんなんだ?」


グウィンドリン「これらは、人の祖だ」


コブラ「こいつらがか?確かにロードランで腐るほど見たが、もうちょっと瑞々しくても良いはずだろ。類人猿にも見えないぜ」


グウィンドリン「否、これらは確かに人の祖だ。これから人に成ろうとしている」



炎を目指す者のうち、一人が崩折れ、うずくまった。
誰からも顧みられこと無く、ひび割れた地に顔を擦り付けるその者は、やがて呼吸を止めた。
炎を目指す者達はひとり、またひとりと倒れ、誰一人として炎に辿り着くこと無く、その姿を消す。
そして荒涼とした地と、炎の地平線だけが残った。


だが、うずくまった最初の者はただひとり、上体を起こした。


何者でも無い其の者は、枯れ枝のような両手で土を掬いあげ、幼子を抱くかのように胸元に引き寄せる。
その両掌には炎は無く、光も無い。ただ見えるのは、炎にさえも照らされぬ、ひと握りの陰のみ。
それは炎に照る掌中にできた、ただの影でもあった。
だが、影は炎のように身を焼かず、冷たい安息と、暖かな希望を其の者に与えた。



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