582:名無しNIPPER[saga]
2019/02/03(日) 07:56:38.34 ID:JzhD+8380
コブラ「!」
女神が一人彷徨う荒地が、波に飲まれる砂山のように溶け、姿かたちを変えていく。
そして再び纏まった時、コブラの目の前には女神と、彼女に対面する、冠を被りし白髪白髭の豪奢、偉丈夫の姿が現れた。
偉丈夫の背後には、銀の鎧に身を包む、あまたの兵の姿。
女神の胸に蒼白い肉塊は無く、偉丈夫は女神の手をとり、己の胸の内を吐露した。
冠の偉丈夫「不思議だ……余はそなたを知らぬ……しかし、そなたを我が身、我が心のひとつとしか見定められぬ…」
冠の偉丈夫「そなたは何者であるか…まるで見切れぬというのに…」
女神「わたくしにも分かりませぬ……わたくしが、誰であるのか…」
女神「ですが、あなたをやはり、知らぬわけでは無いのです……まるで永らく離れた、想い人のように…」
手を握り返す女神はそう言うと、偉丈夫の胸に寄り添い、顔を埋めた。
偉丈夫の両手は女神の腰を抱き、女神は偉丈夫の胸から顔を上げ、王冠を被る顔の頬を、そっと撫でた。
冠の偉丈夫「…これは夢か……」
女神「夢ならば、良い夢です」
女神「夢で無いのなら、醒めることもありません」
そして二人は、唇を重ねた。
銀騎士達は一斉に剣を取り、刃先を暗い天に、刃の腹を自身の眼前へと立て、変わらぬ忠誠と繁栄への祈りを示した。
その銀騎士達の隊列を抜け、二つの人影が女神と偉丈夫に近付き、祝言を送る。
祝言の送り主の一人は、偉丈夫に劣らず大きく、豪奢な出で立ちと歳を刻んだ顔をしている。
その隣に立ち、同じく祝言を送る者がいる。暗い外套を纏い、皮膚の下に黄金色の骨と、透明な肉を忍ばせる者が。
グウィンドリン「祝言を受ける方々は、我が父上と母上だ」
コブラ「!?」
グウィンドリン「かの暗黒神に導かれ、母上と父上は出逢い、子を成した。我が兄上も、妹達も、全ては暗黒神の望む通りに」
コブラ「それじゃあ、この王様が太陽の光の王で、こっちの別嬪さんが、月の女神様ってやつなのか?」
グウィンドリン「然り。父上の名はグウィン、母上には、父上が名を授けた。もはや禁じられた名ではあるが」
コブラ「禁じられた?なぜだ?」
グウィンドリン「その顛末は、これから貴公も見るだろう。焦ることは無い」
コブラ「ちぇっ、まーたこれだ。いっつもそうやって焦ら…」
コブラ「ん?……ん〜?」
グウィンドリン「?」
コブラ「待った、なんかおかしいぜ。俺はこの結婚に異議を申し立てる」
グウィンドリン「なに?」
コブラ「ひとつ!女神様の抱いていた青っちろいグニャグニャが居なくなっている。神が子を捨てるってのは、イマイチ感心できない」
コブラ「ふたつ!そもそも無の世界なんだろ?暗黒神が作った女神様とドラゴン以外に、なんでこんなに大勢むさいのがいるんだ?ただの幻覚見せて洗脳しようったって、簡単に騙される俺じゃないぜ」
グウィンドリン「幻ではない。父上とその騎士も、暗黒神の被造物だ」
コブラ「な、なんだって!?」
グウィンドリン「母から抜かれ、方々へ散ったソウルが、新たな命として栄え始めたのだ。神々を生み、魔女達を生み、人を生み、ソウルは灰の大樹ではない木々や草花、獣達さえも生んだ」
グウィンドリン「そして生まれし者達は皆、その意識の有無に関わらず、一様に来るべき時を待った。暗黒神さえも求める、あるものの現れを」
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