【スペース・コブラ】古い王の地、ロードラン
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581:名無しNIPPER[saga]
2019/02/03(日) 04:22:32.69 ID:JzhD+8380
コブラ「なにっ!?」

グウィンドリン「………」



荒地を歩き、大樹すらも周囲に生えない灰の野に立ったコブラは、目の前に広がるすり鉢状の窪地に、眼を奪われた。



クリスタルボーイ「………」



すり鉢の底に屈み、灰に手を着ける宿敵の姿に、コブラは闘争心を剥き出しにしつつも、グウィンドリンへ対面した。
その気迫は記憶の世界においては如実に現れ、コブラの髪は逆立ち、サイコガンは熱を帯びた。


コブラ「何故だ!何故ヤツがあんたの記憶の中にいる!?あんたはヤツを知らなかったんじゃないのかっ!」

グウィンドリン「静まれ、コブラ。ここは我が記憶の内であると共に、暗黒神の記憶の内でもあるのだ」

コブラ「暗黒神っ…!?」


グウィンドリン「謁見の間にて我らを襲った闇の嵐は、神々のソウルさえも食い尽くすべく、我が心に斬り入った」


グウィンドリン「その試みは貴公の発した神秘により阻まれ、我らは一命を取り留めはした。しかし、暗黒神のソウルの記憶の一部……少なくともロードランにおける彼の邪神の記憶の欠片が、我ら神々の記憶に流入してしまったのだ」


コブラ「それじゃあ、コイツは……あんたの記憶ではなく…」

グウィンドリン「然り。だが、恐らくはそれだけではない」

グウィンドリン「見よ」



グウィンドリンの言葉に促され、冷静さを取り戻したコブラは再び宿敵を見た。
クリスタルボーイは塵に触れた手を地面から離し、立ち上がる。
そして動かぬ口で、ただ一言声を発した。



クリスタルボーイ「現れろ」



一声が小さく響くと、透明な掌が触れていた地点から塵の山が盛り上がり、塵の山は風に吹かれ、形を崩していった。
側面からは白い柔肌が覗き、割れた頂点からは白真珠の如く輝く細髪が露わになる。
肩から垂れ下がり、崩れる事なく残った塵は、乳白色の天衣に姿を変えた。



グウィンドリン「我らが知らぬ何者かに、宇宙より無へと堕とされ、暗黒神はかつての己の器を呼び戻した」

グウィンドリン「だが、それでは力が足りぬ。何よりも暗き力を持つ故に、同様の暗き力、暗き心が、暗黒神の完全なる復活に必要だった」

グウィンドリン「故に、暗黒神は無より生み出でし兵……古竜よりも、光が生む闇を求めた」

グウィンドリン「故に望んだのだ。まずは光あれと」



塵の山から姿を現したのは、慈悲深き女神の姿。
その腹は膨れ、子を宿し、女神の両手は慈しみを込めて、膨れ腹に置かれている。
女神は眠っている。クリスタルボーイはその女神の腹に手をつけ、眩い輝きをひとつ抜き取ると、輝きを頭上へ掲げ、また声を発した。


クリスタルボーイ「散れ。散って俺の糧になるがいい」


声を受けた輝きは弾け、いくつかの光球に分かれると、方々へ飛翔し、広漠たる地平線の彼方へと消えていった。
光球が消えると同時に、女神の顔には苦悶が浮かぶ。
苦しむ女神は屈み込み、クリスタルボーイの足元へ、膨れ腹から蒼白い肉塊を産み落とした。


クリスタルボーイ「お前は全ての母だ。お前は多くを生み、そして滅ぼすだろう」


そう言い残し、クリスタルボーイは闇の霧となって暗い世界に溶け込み、姿を消した。
後に遺された、全ての母と呼ばれた女神は、あてどなく彷徨い始める。
胸に歪な子を抱きながら。



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