580:名無しNIPPER[saga]
2019/02/01(金) 06:42:13.45 ID:06u0vSk90
コブラ「はっ!」
コブラの意識は、灰色の空と岩、灰色の大樹と眠り竜が広がる、果てしなき荒野の只中で形を成した。
その隣には、陰の太陽の王冠を被らぬ、グウィンドリンが立つ。
灰色の大樹は葉をつけず、竜達はみな首を垂れ、動かない。
コブラ「ここは……」
グウィンドリン「我が記憶の内。より正しく言うならば、見たものの記憶だ」
コブラ「見たもの、か。光あれと言う前の世界にしちゃ、随分ゴチャッと……ん?おい、あんた…」
グウィンドリン「なんだ?」
コブラ「あんた男だったのか!?」
グウィンドリン「………」
周囲を見渡すついでに、視界の端にグウィンドリンを捉えたコブラは、感じた驚きをそのまま口に出した。
グウィンドリンの胸からは、細やかながらも主張した双丘が消え、頬には少年のそれと同じ、若干の引き締まりが生じている。
小さい喉仏を通して発せられる声の色は変わらないが、それは発声と紛れもなく連動していた。
グウィンドリン「少し歩こう」
コブラ「おぉっと、俺としたことが、つい本音を口に出しちまった。怒らせちゃっ…」
コブラ「!?」
グウィンドリン「心が繋がっているのだ。貴公の思慮も全て露わになる。恥じることでは無い」
コブラ「まいったぜ…罪の告白は苦手なんだ。神が騙し討ちなんてしていいのか?信心が離れるぜ」
グウィンドリン「元からありもしないだろう」
一人と一柱は語らいながら荒野を歩いた。
竜は目覚めることも無く、野を吹く風はコブラの身体を通過し、グウィンドリンの衣服を揺らさない。
グウィンドリン「我が力は月の女神のものであり、我が身体も、月の女神のものではある」
グウィンドリン「だが、心は太陽の光の王のもの。我が有り様もそれ故だ」
コブラ「するってぇと……あんたは心が男だから、この精神世界では少年として存在してるっていうのか?」
グウィンドリン「精神世界とは、面白い名で呼ぶのだな」
グウィンドリン「貴公の読みだが、それは当たっているぞ。我が王、我が兄妹、我が臣下たちは我が心の有り様を憐れに思ったが、こうして生まれたことは我が誇りだ」
グウィンドリン「もっとも、仕草には難があったのだから、憐れみも仕方のない事ではあったが」
コブラ「男勝りのやんちゃな女神か。オシメするのも一苦労だ」
コブラ「しかしだ。周りがあんたを憐れに思った原因ってのは、性別よりもその脚にあると思うぜ」
コブラの先を歩くグウィンドリンの蛇脚は、荒野を滑り、岩肌を抜ける。
グウィンドリンはコブラの言葉に顔を向けず、目的の場所へとコブラを導いた。
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