512:名無しNIPPER[saga]
2018/10/26(金) 23:25:25.82 ID:wKd5bV410
シュパァッ
王女グウィネヴィアが右手を掲げ、掌を開くと、金色の輝きが掌の中で揺らぎ、収束する。
その光は徐々に失われ、実体を表し始め、ついには大器と成した。
グウィネヴィア「これは王の器です。受け取ってください」
王女がコブラへ向け右手を差し出すと、一抱えもある器は小さくなり、コブラの胸元へと浮かぶ。
コブラ「俺の器も大したことないとは思っていたが、まさかプレゼントされるとはね」
グウィネヴィア「王の器は大いなる四つのソウルを求めます。大いなるソウルが器を満たす時、器は貴方を火の炉へと導くでしょう」
グウィネヴィア「貴方には大王グウィンの後継として、そこで世界の火を灯していただきたいのです」
コブラ「世界の火ねぇ……それを灯したとして、俺たちは元の世界に帰れるのか?」
グウィネヴィア「火が灯れば、貴方の役目は終わります。人の世の夜も終わり、不死の現れも無くなるでしょう」
コブラ「じゃあやめだ。悪いがコイツは受け取れない」
レディ「コブラ?どうして…」
コブラ「俺は帰れるかどうかを聞いたんだ。そこをはっきり言われないと信用できないぜ」
グウィネヴィア「お願いです。私たちはすでに火の明るさを知り、熱を知り、生命の営みを知っています」
グウィネヴィア「今、世界の火を失えば、残るのは冷たい暗闇と、恐ればかりなのです」
グウィネヴィア「旅路に不安があると言うのなら、祭祀場に潜む世界の蛇、王の探索者フラムトを訪ねてください。きっと貴方を導くでしょう」
コブラ「導きならもう足りてる。行こうぜレディ」
レディ「コブラ、ほんとうにいいの?」
コブラ「俺が話を濁す依頼人とは仕事しない主義なのは、キミも知ってるだろ?相手が神でも関係ないさ」
「いらんと言うのなら、器は俺がもらおう」
コブラ「なに?」
突如として王女の間の隅、その暗がりから男の声が響いたかと思うと、器が声の主の元へ、まるで吸い込まれようにして消失した。
声の主は影から身を曝け出すが、黒い外套を身に纏ったその姿は影よりもむしろ暗く、見えるのは口元のみ。
口周りの肌色は人のものと変わらず、唇の色もコブラのそれと変わらないが、動く口元に表情を読み取ることはできない。
バダーン!!
コブラ「!」
両開きの扉を蹴破り、オーンスタインが槍を構えて押し入ってきた。
十字槍には雷が蓄えられ、槍先は今にも放雷せんばかりに輝いている。
オーンスタイン「貴様何をするか!我らが王の創りし器と知っての狼藉ならば、その首切り落とす!」
コブラ「な、なんだなんだ?」
レディ「仲間割れ?…でも、何か様子が変よ…」
黒い外套の男「どこに隠したかと思っていたが、まさかグウィン王の秘術によって実体を失っていたとはな。どおりで王族にしか器が見えんわけだ」
オーンスタイン「…やはり、貴様は我らが主神の誓いを破ってでも、斬り殺しておくべきだったか」
オーンスタイン「覚悟!」ブオォン!!
竜狩りの十字槍が、黒い外套の男の首筋向け振り回された時、またも声が響いた。
ただし、声の主は王の器の簒奪者ではない。
その声は若々しく、妙齢の美女の物のようでもあり、少年の物のようでもあった。
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