112:名無しNIPPER[saga]
2016/10/13(木) 08:16:04.40 ID:pqizT1gx0
自嘲思考に陥った戦士は、三人を心の中で嘲笑いつつ、また、崇敬の念なども抱いていた。
しかしそれらは複雑に混ざり合っていたため、俺とあいつらは違う、という思考に終始していた。
大沼から来た呪術師、ラレンティウス。
ヴィンハイムの元学徒、グリッグス。
太陽の戦士を自称する男、ソラール。
彼らの名前が頭に浮かび、それらを自分と比べる。
そして気付く。
戦士(あ…?)
戦士(おい、おかしいじゃねえか…)
戦士(なんでだ?……おい、なんだよコレ…)
自分の名前を思い出せない事に。
それは、不死としての終焉。限界を意味していた。
ソラール「しかし弱った。貴公の言うとおり、戦力は足りない。醜悪な人食い竜に辿り着く頃には呪術も魔法も、俺の雷の槍も尽きていた」
ソラール「なんとか撃てる回数を増やせないのか?」
グリッグス「それは無理だ。体系化された魔法には、それだけの理由があるんだ。限りを超えて魔法を使えば、術者からソウルが失われ、力尽きてしまうだろう」
ラレンティウス「俺の呪術も理由は違うが、まぁそんな感じだ。自然の成り行きには逆らえない。篝火で火を継ぎ足さないと呪術の火が弱まっちまうんだ」
ラレンティウス「アンタこそどうなんだ?聖職者なんだから、他にもいろいろ使えるんじゃないのか?神に祈った事が無いから、奇跡についてはよく知らないが」
ソラール「悪いが俺は聖職者じゃない。この雷の槍も、太陽に祈っていたらいつの間にか出せるようになっていただけだ。ある意味、これこそ本当の奇跡かもしれんな。ハハハ」
戦士「な、なぁ、ちょっといいか?」
ソラール「ん?なん、なんだ?どうした?」
戦士「なんというか、迷惑かもしれないが、俺も仲間に入れてくれたらありがたいんだが…」
グリッグス「驚いたな…君がそんな事を言うとは…」
ラレンティウス「おいその言い方は無いだろう。仲間に引き入れたいと言ったのはあんたじゃないか」
グリッグス「いや、そうなんだが、少々意外だったもので…」
戦士「迷惑ならいいんだ。俺は小心者だし、役に立てるかも分からないからな…別にいいんだ…」
ソラール「いいや、十分にありがたいさ。仲間が増えるのは心強い。貴公らもそう思うだろう?」
ラレンティウス「俺はそれでいいと思うよ。こいつがどうかは分からんがね」
グリッグス「しっ、失礼だな!その言い方ではまるで私が悪役みたいじゃないか!」
ラレンティウス「ハハハ」
ソラール「まぁそういう訳だ。よろしく頼む」
戦士「あ、ああ…そうか…そいつは良かった…」
不死とは、生と死の境目が弱まった者達の事を言う。
それは生者にも死者にもなりきれない事を意味しており、いわば無限に崩壊していく生体である。
死ぬたびに僅かづつだが、肉体の再構成は正確さを欠いていき、灰に近づいていく。
ソウルを元に意思や思考を決定する器官、脳も、例外ではない。
肉体的な破滅を長らえる代わりに、精神的、人格的な死をより際立たせるのが不死。
なればこそである。
戦士はそれを恐れ、恐怖を紛らわせるために、旅の一行に加わった。
そして、彼の逃避行が世界の命運に一石を投じることとなる。
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