7:名無しNIPPER[saga]
2016/08/17(水) 08:54:29.71 ID:z/+VcU0Mo
瑞鶴は――笑っていた。
ただの笑みではない。心の底から楽しそうな笑みである。
親潮は、部隊長として紹介された折に浮かべていたぎこちない笑顔しか、瑞鶴の笑みを知らない。
だから困惑した。おそらく他の艦も、皆、困惑していた。
どうして今、そんな笑みを浮かべるのか、と。
虚勢には、どうしても見えなかった。
置かれた状況に心から満足していると、瑞鶴の笑顔は語っていたのだ。
――それからは、圧巻であった。
この北方海域、確かに数ある戦線の中では危険度は低い。
しかし、それでも戦場であることに変わりない。
油断が、慢心が、偶然が全て死に直結する戦場。
敵が本気で殺しに来る、戦場。
紛れも無く、死に一番近い場所を――瑞鶴は、圧倒していた。
動きに迷いはない。一切の淀みもない。指示通りに、流れ作業のように、敵を屠っていく。
確かに瑞鶴は『指揮官』では無かった。だが――
「………」
いつしか親潮は言葉を失っていた。
あれが―あれが艦娘という兵器の完成形であるのならば、自分には決して辿りつけぬ場所であると悟って。
そして同時に、瑞鶴という艦娘を、これ以上なく恐ろしく感じたのだ。
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