27:宥咲
2016/08/24(水) 22:41:11.49 ID:zOosj66d0
そしてもう一つ。だからこそ、不器用でやり方が間違っていて、それを分かってるけど変えられない。
大事な妹が、迷子になりやすいのに東京まで会いに来てくれたのに、それを突き放してしまうお姉ちゃん。
一人ぼっちで泣いていて、でも助けてほしいって言えない彼女も、助けたいと思いました。
沢山のお話をしました。玄ちゃんとの事や、お母さんのお話も。
これまで玄ちゃんとどうしてきたのか、やって良かったこと、後悔したこと。
どうしたらいいのかも、会ったばかりの私の話がどれだけ伝わるかも分かりませんでした。
でも、絶対に伝えたい事はぜんぶ伝えました。照さんがこの後どうするとしても「精一杯やった」って言えるぐらい。
話し終わったら彼女は、すごく悲しそうな目をしていました。そうして扉へと体を向けました。
やっぱり駄目だったのかもしれない、そう思っていると「ありがとう」って小さな声が聞こえました。
その声がどこか安心したように思えたのは、きっと気のせいじゃないと、自分でも不思議だけど予感していました。
次の日は彼女たちの準決勝。会場でずっと試合を見ていました。
玄ちゃんの先鋒から私の相手、それから穏乃ちゃんが戦う大将まで、弘世さんの癖を見る時みたいに、細かい部分まで。
はじめはちゃんと全員の打ち方や特徴を意識して見ていました。
けれど、段々と臨海の圧倒的な強さが浮き彫りになってきて、決勝の予習というよりも他校……清澄の応援になっていました。
大将戦で彼女は自分の打ち方が出来なくて、寒さにこごえる表情でいて、それでも懸命に戦っていました。
滲む涙を拭って、ひたすら耐えて……花が雪解けを待つように。
そして息が止まるかという対局の末に、決勝への参加権を手にしたのでした。
……いえ、手にしたというより、ほんの少しだけ運が良かったのかもしれません。ほんのちょっぴりの加減で明暗が別れていました。
臨海の大将の子はそのぐらい強大で、とても寒い選手でした。
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