キスショット「これも、また、戯言か」
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64:名無しNIPPER[saga]
2016/05/14(土) 15:33:09.48 ID:I+fdqcufo

 …………。

 まるでわけがわからない。

 一体、なにが起きているんだ?

 どうして、ぼくの前にいきなり吸血鬼が現れて――いきなり死にかけているんだ?

 ここにいてはいけないはずのぼくの前に、存在してはいけないはずの吸血鬼がいる。

 死ぬべきであるぼくが生きていて、不死身であるはずの吸血鬼が死にかけている。

「お……おい」
                                   ヒソ
 と。動揺のまま、口も利けずにいるぼくに、『彼女』は眉を顰めたようだった。

 いや、それは苦痛で顰めたのかもしれない。

 何せ『彼女』は手足を全て喪失しているのだ。

「ど……どうしたのじゃ。儂を助けられるのじゃぞ。こんな栄誉が、他にあると思うのか。

何をする必要もない――儂に首を差し出せば、後は全部、儂がやる」

「……血……血って、そんな……ど――どれくらい、いるんですか?」
                              シノ
「……とりあえず、うぬ一人分もらえれば、急場は凌げる」

「そうですか、ぼく一人分ですか。なるほどそれはよかった――ってそれじゃぼく死んじゃ

うじゃないですかっ!」

 動転のあまり戯言遣い、生まれて初めてのノリ突っ込みだった。

 そしてこれを生涯最後にする気はない。


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