キスショット「これも、また、戯言か」
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142:名無しNIPPER[saga]
2016/05/20(金) 22:30:42.04 ID:ntvrM9VEo

「あ、あのね、月火ちゃん。えっと」

「ああ、大丈夫ですよー。火憐ちゃんの隣で全部聞いてたんで。あ、その火憐ちゃんはお

兄さんからの連絡で安心してもう寝ちゃったんで、この会話を聞かれる心配はないですよ。

それと、パパとママには『お兄さんは自分探しの旅に出た』って、伝えておきますから」

「…………ありがとう」

 手際が良すぎる……やはりあいつの妹さんと言うべきか。

「いえいえ、これくらい、礼には及びません。……ところで、お兄さん、いつ帰ってこれるか

わからない、とのことですけど、本当に何の目処も立ってないんですか?」

「ん? えーと、そうだね。早く終わらせる努力はするつもりだけど、せっかくがんばって

入れてもらったんだし、高校が始まるまでには帰りたいかな」

「ですか」

「ですです」

「じゃあ、お兄さん、直江津高校の始業式の日、四月八日になったら、私たち、緊急事態

ってことでお兄さんを探すから」

「…………え?」

「私たちのネットワークを駆使して、町の女子中学生総出で探すから」

「いやほんとそういうのマジでやめてって」

 この子の場合、おそらく冗談では済まされない。

「そういうわけだから、私たちに首を突っ込まれたくなかったら、早く帰ってきてくださいね」

 私たちは――お兄さんを助けたくって、お兄さんの力になりたくって――しょうがない

んだから。と言って、月火ちゃんは電話を切った。

 …………助けになりたくて、仕方ない、か。

「やっぱり兄妹だよなあ、ほんと」



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