キスショット「これも、また、戯言か」
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138:名無しNIPPER[saga]
2016/05/20(金) 22:22:53.53 ID:ntvrM9VEo

 ディスプレイには、三月二十八日、午後五時二十七分。不在着信三百八十二件、とあった。

 たしか、ぼくがこっそり家を出たのが三月二十六日。二日間の無断外泊は相当に彼の

家族を心配させてしまったらしい。警察沙汰にはしてくれてないと思いたいが…………。

「…………」

 申し訳なさを覚えながら、ぼくは覚悟を決めて、電話を掛ける。

 一コールもしないうちに、「もしもし!? 阿良々木ですけど!!!」と、電話に出て

くれたのは、彼の妹さん。阿良々木家長女、阿良々木火憐ちゃんだった。

「あの、その、ぼくだけど」

 おそるおそる、ぼくは声を出す。

「お兄さん!? その声お兄さんだよね!!!! はああああ、よかった〜!!! 生きてた〜!!!

ううう、ぐすっ、ううううううう……今までなにじてたんだよお兄さんよおおおお……

月火ちゃんと二人、ずっと心配してたんだぞ……なんで何も言わずにどっかいいっちゃう

うんだよおおお。う、ううううううううぅっぅううぅう……」

「……はい、ごめんなさい」

 泣きじゃくる火憐ちゃんに思わず謝罪する。

 しかし、生死の心配までされていたとは……結構大ごとになっているようだった。いや、

実際一度死んでしまったのだけれど。

「だって……お兄さん。いつもふらふらっと死んじゃいそうな感じしてるんだもん……」

 『ふらふらっと』『死んじゃいそう』合わさることのなさそうな形容だが、まあぼくを

指して言うには正しい言葉だった。



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