モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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92: ◆EBFgUqOyPQ[saga sage]
2016/05/07(土) 20:26:05.89 ID:glNSs2qCo

 アーニャは迷うことなく、その引き金を引く。
 銃身から弾丸まで結晶で作られたそれだが、機能は十分に果たしていた。
 火薬の炸裂による推進力さえも、素霊の流動によって再現し、本物と違わぬ速度で結晶の銃弾を放つ。
 拳銃の機構を隊長から教わり、知り尽くしていたからこそできる素霊の扱い方。

 圧倒的に経験が不足している『アナスタシア』の直接的な使い方とは対極的な素霊の扱い。
 そしてアーニャの放った銃弾は、本来人を殺す道具としての本分は果たさずに、迫りくる結晶中の先端に着弾した。

「……砕けて!」

 アーニャの合図と同時に、着弾した結晶柱は何の前触れなく先端から砕け散り、素霊に戻っていく。
 統率された素霊の大群によって形成された結晶体は、本来あるべき姿に帰っていく。

「やっぱり……ですね」

 アーニャは予感していたことがその想定通りの結果となったことに付い口角を上げる。
 しかし迫りくる柱は破壊できたが、空中で十分に体勢を整えることができず地面に胴体から着地するはめになった。
 ろくな受け身さえ取れず地面に激突したアーニャはうめき声を上げながら転がり、その先に合った一本の木にぶつかって静止する。
 先ほど扱った結晶銃はその際に手放してしまい、元の素霊に帰ったようだ。

「……アー……イタ、い……です」

 アーニャはふらつきながらも、両の腕で地面を掴みゆっくりと立ち上がる。
 いかにこの体が霊体に近いもので、本物ではないとはいえその基本構成は人間とほぼ同一。
 全身の至るところに擦過傷と打ち身、軋み上げる内臓の感覚が残る。

「ニェート……でも、立ち上がらなきゃ。

痛い、だけど……本当は傷はすぐには、治りません。

痛みは、人として、普通だから……いまさらこんなことで、弱音なんて、吐けないから」

 アーニャにとってすぐ治癒してしまう痛みなど、刹那に感じる電流のようなものであった。
 しかし、様々な経験をして今体に刻まれている傷は、まぎれもなく痛覚を感じ続けそこに存在していることを感じさせる。
 今のアーニャには残った天聖気で肉体を維持しているので、傷を治癒させるためにまわす天聖気は残っていない。
 これまでのように付いた傷をすぐに治すことはできないのだ。



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