モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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◆GPqSPFyVMNeP
[sage]
2016/05/07(土) 09:56:27.03 ID:AfaEDJBVO
「そういうことじゃなくて。私たち結構がんばって、カースが育ちきらないうちに仕留めてきたじゃないですか」
《ああ、洋子のおかげで……いや待て、それなら何で、あれだけ育つ余裕があったんだ? 確かに芽のうちに見つけて、潰してきたんだ》
「ある程度大きくなるまで、どこかに隠れてた……私とヒノタマの目から逃れて? ううん、そんなこと、ただのカースにできるわけがない」
《あるいは、育ちきったカースを生み出せる何かが、この学院内に》
その時、洋子は視界を上から下に通り過ぎる黒い塊を見た。塊は眼前1メートルの地面に激突し、衝撃でひしゃげ、黒い泥を周囲に撒き散らした。
「っ! カース!? ハイーッ!」
泥を体の正面に浴びながら、洋子は怯むことなくカエン索敵視界を展開。茂みの桃色と同等サイズの緑色は怠惰のカース! 即座にカエンを放つ!
カエン索敵視界を1本の投槍が横切り、緑色に突き刺さった。瞬間、朱色の火柱が立ち、緑色は燃え、……火柱が鎮火! 核を失った黒い泥は、アスファルト路面に吸い込まれていく。
(燃やしきれなかった!? なんで)
疑問に答えるように、ニューロンの内に声が起こった。洋子に力を与えるヒノタマ……だが、その声は今やノイズにまみれ、ブツ切りの断片に過ぎぬ。
『……ーコ! はや……、私の……ら……』
やがて声は途絶え、洋子は己の全てが半分になったような奇妙な違和感に囚われた。手を握り、開く。朱色の炎はすぐに消え、火の粉が散り、もはや煙すら立たなかった。
「寒い……? ウソでしょ、こんな……」
全身から活力と熱が去っていく。洋子は震えを抑えようとした。ヒノタマの力が失われたというのか?
……否。身体は動かず、心もまた無気力に苛まれながら、それに抗おうとする力を感じる。ヒノタマはそこにいる。ただ、緑色のモヤに隔てられ、見えないだけだ。
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