モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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50: ◆EBFgUqOyPQ[saga sage]
2016/05/07(土) 19:44:55.09 ID:glNSs2qCo

 その行き場のない怒りを表すかのように、樹氷のような竜尾がアナスタシアから伸びる。
 そして眼下の隊長に向け、感情と共に降り下ろす。

 轟音と粉塵。

 ありったけの殺意を込めて、放ち続けた攻撃は小休止に入った。
 オーバーキルにも等しい結晶の乱射は、これまでの軋轢も含めた心からの攻撃だ。

 アナスタシアは翼をはためかせてさらに上空に上がり、氷柱のように数多の結晶杭を再び生成。
 彼女の意志ひとつで、それらの槍は自由落下するだろう。

「……殺す気でやりました。

ワタシの最も嫌いなことをしたのに……思ったよりも、苦しくない。

ワタシも、人でなしになってしまったのかも……」

 人殺しをしようと、人を傷つけようとしたのに、心が痛まない。
 アナスタシアは、心が痛まないことに、心を痛めていた。

 伝うのは一筋の涙。
 後戻りはできないところまで来てしまったことに、理解はしていた。
 でもようやく、そこまで来て気づいたのだ。

 人は思ったよりも、優しくないことに。

「ククク……クハハハハーーーーッハッハハ!!!!!

『人でなし』とは……違うさ。

それが人だ。クソガキ」

 晴れる土煙の中から高らかに上がる笑い声。
 先ほどまでの苛立ちを振り切ったように、その表情は晴れやかである。

 そう、アナスタシアの猛攻の直撃を受けたにもかかわらず、隊長は依然健在であった。

「どいつもこいつも、人の生き死にだの、殺し殺されただのを気にし過ぎなんだよ。

人は逝くときは一瞬だ。その行為に後悔とか罪悪感とかが乗るわけない。

そして人が縛られるのは殺した後だ。殺す行為そのものに人でなしも糞もあるわけない」

 その表情こそ、上機嫌なものであったが、肉体の方はやはり無事ではない。
 体中のいたるところから出血しており、わき腹には捌き損ねたのか結晶杭が一本深々と刺さっていた。



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