モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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◆EBFgUqOyPQ
[saga sage]
2016/10/18(火) 02:44:47.17 ID:nZ3oq+wSo
『ナンダ……コレハ?』
『シラナイ。ワタシタチハ、コンナノシラナイ!』
周囲の泥たちの視線が驚愕の物に代わる。
決して我らの泥は狙った獲物を逃がすことはないという確信が崩れ、意味の分からない力によって異物が尚も邁進することに眷属たちは驚愕を禁じ得なかった。
全力で泥に沈めようとしている奈緒は、決して沈むことなく、それどころか拘束を振り切り歩みを進めているのだ。
そしてそこに理屈など存在しない。あるのは奈緒以外に、この場の誰も持ち合わせていない感情のみであった。
「難しく、考えすぎなんだよ。まったく、どいつもこいつも暗いって」
奈緒は困惑する泥たちを横目ににやりと笑い、一つの建物を視界に入れる。
それは遊園地によくあるキャリアカー式の売店であり、小さなグッズと共に私用であろうカレンダーがかけられている。
「……9月16日。ああそうだ。この日だよ。
パパとママ、3人で遊園地に行ったのは、ちょうど7歳の誕生日だ。
すっかり忘れてたな。あたしも……お前も」
奈緒の視線の先は楽しそうに笑うウルティマの姿。
だがその笑顔は空虚であり、きっと在りし日の幸せさえもすでに忘れ去っているのだろう。
「でも、無くしてはいないはずだよな。だってそれは、あたし『たち』の幸せそのものだ。
それに思い焦がれる限り、あたしは絶対にあたしをやめたりしないんだから」
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