モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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32: ◆EBFgUqOyPQ[saga sage]
2016/05/07(土) 19:30:58.93 ID:glNSs2qCo

「おっけ、ありがと沙理奈さん。

じゃあ……ちゃちゃっと終わらせよっか。紗枝ちゃん」

 背中は任せた、とでも言わんばかりに沙理奈に背中を向け、隣に紗枝が来るように促す周子。
 その雰囲気こそ、いつもの適当な感じに戻っていた。

「……せやなぁ。ほな……いきましょか」

 いつか周子の隣に並び立ちたいと思っていた紗枝だったが、周子に頼られて、今それが叶うというのにその心中は複雑であった。
 想像していたのは、二人で悪しき妖怪に立ち向かい、並び立って笑顔で帰れるようなそんな風景。

 だが、周子の繕ったように見える適当な様子、その仮面の下が複雑なものであることが、紗枝には容易に見抜けた。
 これは紗枝が望んだ風景でもないし、周子もこのことを望んでいないことがわかったのだ。

 相手は悪しき妖怪でも、世界を絶望させるような巨悪でもない。
 つい先日まで隣にいた、同年代の少女の願いを止めるために動くのだ。

 万人のためであっても、その願いが許容されるものでないとしても、決してこの行いが正しかったとは胸を張っては言えないだろう。
 そんな周子の足取りで紗枝も感付いたのだ。

 この結末は、決してハッピーエンドは向かえないことを。

「な、なぁちょっと待て、シューコ!」

 プロダクションを後にしようとする二人にかかる制止の声。
 その声の主である美玲は、混乱覚めぬ頭においても二人を止めたのだ。

「どうしたん?美玲」

 自然に、違和感なく周子は、美玲の方へと向き直る。
 この制止を彼女は予感していた。だからこそ、やさしく、自分以外にもそれを分け与えれるように育ってくれた美玲を誇りに思いながら、その言葉を待つのだ。



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