モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
1- 20
314: ◆EBFgUqOyPQ[saga sage]
2016/10/18(火) 02:23:41.98 ID:nZ3oq+wSo


***


 いつのころからか、とてもおなかが空いていた。



「第――次、細胞移植実験を始める」

 はじめは、沢山の『みんな』を繋げられた。
 その誰もが、痛い痛いと泣き叫んでいて、切り刻まれて縫い合わされてくっ付けられるたび、そのみんなの数だけ痛みは倍増していく。
 いつも頭の中にはみんなの苦痛が溢れていて、そしてあたしも例外なく体中が痛くていつも泣いていた。

 だけどたくさん繋がれていたから、どれがあたしの目なのかわからなくて、仕方ないから出せる場所からはとにかく出した気がする。
 逆にそれはみんなにとっても例外じゃないから、いろんなところからみんな出していた気がする。

 いつも響くみんなの声であたしの声がよくわからなくなっていく。
 ぞうさん、きりんさん、くまさん、おうまさん、とらさん、みんな、みんなみんなみんなあたしにつながっていて、あたしはどれとも違っていたはずだったのに、いつの間にかみんなと溶け合っていた。
 あたしは『何』だったのか、姿がよく思い出せなくなって、寄り集まったみんなと一緒に溶けていく。
 そしてみんなの中にあたしが溶けきったら、それでこのみんなの痛みからあたしは解放されるのかと、やっと楽になれるのかと思ったら。

 どこかの誰かが、いつもその直前で引き上げるのだ。
 いや、どこかの誰かじゃない、誰もが、みんなが、あたしがいなくなることを拒んでいる。
 そしていつも、どうあがいても、その中心に座らされて新たな『みんな』を歓迎しなければならなかった。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
558Res/632.57 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice