モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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276: ◆EBFgUqOyPQ[saga sage]
2016/10/18(火) 01:58:39.84 ID:nZ3oq+wSo

***

『AAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』

 黒い泥の塊は、人の影のような形を作りながら表面が泡立つ。
 それは人の姿へと変わろうとしているのではなく、元の形こそが人型であるということなのだろう。

 先ほどまでの泥の塊として流体は一つの形態であり、その『カース』は新たな容貌へと変化しようとしていた。

『オナカ……スイタヨウ……。

オ……オナ、カアアアアアAAAAA!!!!!!!!!!』

 その口からだらりと落ちる黒い泥は、満たされぬ空腹を吐露する意思の表れだろう。
 体を形成する泥より粘性の少ないその液体はロビーの床に落ちるとともに、小さな煙を上げながら床の表面とともに蒸発した。

 満たされない空腹を満たすためならば、すなわち食らい続けるしかない。
 ならばこそ、先ほど食いそこなったヤイバー甲のような不純物を身にまとったものではない、もっと柔らかな『食事』を求めるのも必然であった。

 捕食により適した体への変化は、その遺伝子に刻み込まれていた。
 カースの背からはより多くの獲物を捕らえるべく発達した巨大な手が一対、天井に向かって泡立つように膨張し伸びていく。
 明らかにその場にある泥の総量を超えた体積変化は、逃げ惑う人々にとってはさらなる脅威でしかなかった。

『ガ、ガアアアアアアアア!』

 背中から生えた巨大な両腕は伸ばしただけでこのロビーの幅の8割程度を網羅する。
 腕の泡立ちは、筋繊維が伸縮するような軋みのような音をかすかに上げる。
 伸ばした腕は、その場にいた哀れな贄を誰一人として逃がさぬように地を這うように振られた。

「ぎゃああああああ!」
「イヤアアアアアア!」
「た、助けてええええ!」

 その剛腕に捕まった人々は、各々が助けを求める声を上げる。
 人々の叫びなど意に介さず、『カース』は新たな形へと変化する。
 先ほどヤイバー甲を丸呑みした時のような、人の大顎とは言えぬような先の見えない漆黒の孔。
 腕の先の捉えた獲物たちを上に掲げ、自らの捕食機関である底の見えない洞に落とそうとする。



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