モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
1- 20
23: ◆EBFgUqOyPQ[saga sage]
2016/05/07(土) 18:15:01.36 ID:glNSs2qCo

 願わくば、このまま悲劇で終わらないでほしい。
 自らは観測者だ。舞台上の演者でもなければ、筋書をなぞる語り部でもない。
 観客だからこそ、客観だからこそ、全てを台無しにしてでも、こんな悲劇は認めたくはなかった。

「何度も……言わせないで、ください。

私はもう……選びません。これが、私の終わりです。空っぽの私に……期待しないで。

『願い』は、偽物です。私と同じで……嘘と都合の、ヴァーチカ……塊、です」

 風に飛ばされてしまいそうな重量しかないその体は、そのベンチからは動かない。
 中身を伴わない殻の固まりは、どこ吹く風のごとくがらんどうに響くだけだ。

「だが、それでも、もう一度だけ、尋ねよう。

難しい事じゃない。ただ始まりなだけだ。『願い』は複雑じゃない、原初衝動だ。

経験の自己保存も、他者への理由の依存も、それもまた『望み』だ。

だが『願い』とはもっと単純なはずだ。

理屈なんてどうでもいい。理由なんて存在しない。ただそこにあるだけの、一粒の結晶だ。

考えてみろ。そして、その上で考えろ。お前が本当に欲しかった『願い』を」

 アーニャは虚ろな瞳で、隊長の背を見上げる。
 前方から再び吹いてくる風は、隊長の服を靡かせる。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
558Res/632.57 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice